
2023年に完成し各地で上映を続けている映画「本を綴(つづ)る」が5月23日、鎌倉芸術館(鎌倉市大船)で上映される。
同作品は、小説が書けなくなってしまったベストセラー作家が各地の書店や図書館を巡り、人に出会いながら自分自身と向き合っていくロードムービー。監督は「花戦さ」(2017年公開)で第41回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した篠原哲雄さん。主演は矢柴俊博さんで、共演は遠藤久美子さん、宮本真希さん、長谷川朝晴さんら。上映時間は107分。現在は各地で上映を続けている。
「もともとは篠原監督と制作したドラマ『本を贈る』から、この映画につながった」と話すのは、脚本とプロデュースを担当した千勝一凛さん。加盟店数が最多だった1984(昭和59)年から2022年までに8割減少したという東京都書店組合が、より多くの人に書店に足を運んでもらえるようにと2021年に開設したユーチューブチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」のコンテンツの一つとして制作した連続ドラマだった。
千勝さんは「監督と共に都内の書店を取材しドラマの脚本を書いているうちに、次は映画にしたいとひそかに考えていた」と話し、篠原監督も「撮影しながら、本にまつわる物語をこのまま終わらせるのはもったいない。続編が必要」と感じていたと言い、思いが一致した。
その後、全国の書店や図書館の情報を収集したり、実際に訪ねたりするうちに映画の骨組みができ、ドラマの登場人物の一人だった作家を主人公に映画制作が始まった。那須塩原の図書館や週末だけ開いている森の中の小さな書店、2010(平成22)年に英ガーディアン紙が選ぶ「世界で一番美しい本屋10」に選出された京都の書店、香川の移動図書館など、実在する場所を舞台に撮影した。
千勝さんは「人がいろいろな所で、いろいろな人と出会い変わっていく様を描いた。この映画には答えがない。こうでなければいけないということはないし、本に居場所があるように、人の居場所もいろいろあっていいというメッセージを込めた」と話す。
公開すると「『本屋に行きたくなった』『本を一冊読んだ感覚だった』などの声をもらったほか、書店や映画館がない地域から上映したいという相談も多い」と篠原さん。鎌倉での上映は配給会社からの提案だったが、千勝さんは「出身地の京都に似た雰囲気があり、以前から好きな場所なのでうれしかった。ただ、鎌倉でも書店が減っていること、今は映画館もなくなってしまったことを知り驚いた」と振り返る。
篠原監督は「会場の鎌倉芸術館は、かつてスタッフとして働いたこともある松竹大船撮影所の跡地に立つ。懐かしく感慨深いものがある」と話し、千勝さんは「上映後の舞台あいさつの時間をたっぷり用意したので、鎌倉の皆さんとの交流も楽しみ」と来場を呼びかける。
上映は13時から。料金は1,000円で全席自由。舞台あいさつには、篠原監督や千勝さんのほか、矢柴俊博さん、宮本真希さん、加藤久雅さん、丈さん、ノブイシイさんらも登壇する。