鎌倉の建長寺(鎌倉市山ノ内)で10月28日、「ZEN NIGHT WALK KAMAKURA(ゼン・ナイト・ウオーク)~秋の紅葉ライトアップ建長寺夜間拝観~」が始まった。主催は、ニューロテクノロジー研究開発などを行うVIE(大町)と日本経済新聞社。
ライトアップしたミストが雲海のように漂う方丈庭園の「雲海 風龍の舞」
同社の今村泰彦社長は「脳科学をやっていて、そもそも心とは何なのか、脳とは何なのかということを突き詰めていくと、仏教や禅に行き当たる」と話す。昨年、京都の建仁寺(けんにんじ)(京都市東山区)で開いた同イベントでは3万人以上が来場した。「作り上げてきたテクノロジーや音楽を、当社の地元であり、歴史が紡がれている建長寺で多くの人に体験してもらえることになった」と続ける。
建長寺は1253年創建の鎌倉五山第1位の禅寺で、臨済宗建長寺派の大本山。境内は国の史跡に指定されている。同イベントは、初代住職の開山大覚禅師の750年遠諱(おんき)を迎える2028(令和10)年に向けた記念事業の一つ。
来場者は、ライトアップされた総門から山門、仏殿、法堂、唐門、方丈へと続く回廊を、聞くことで脳波に影響が出ることが科学的に実証された脳を整える音楽「ニューロミュージック」が流れ、ミストが漂う中、音と静寂、光と影を楽しみながら歩く。
10月27日に開いた内覧会で、建長寺派宗務総長の長尾宏道さんは「ここまで長期間の催しは初めて。今回の新しい取り組みで、地域の皆さんにも建長寺を再発見してもらえればありがたい」、松尾崇鎌倉市長は「オーバーツーリズムといわれる中、ナイトタイムエコノミーとしても大きな挑戦。伝統と最先端テクノロジーを活用した取り組みは、鎌倉ならではで素晴らしくありがたい。昨年、建仁寺に行った際は満員で見ることができなかったので(今回は)楽しみ」と、それぞれ話した。
木々と建物に囲まれた方丈庭園では「雲海 風龍の舞」と題し、ライトアップしたミストが雲海のように漂い、風の動きを見ることができる幻想的な空間を演出する。
法堂(はっとう)では、天井に描かれている小泉淳作の雲龍図を、慶応義塾大学教授でアーティストの脇田玲さんが、先人の美を継承する「写し」として現代の手法で表現。伝統文化とテクノロジーの融合で描く「龍雨図」を大型ビジョンに投影する。脇田さんは「単にデジタルスキャンして動かすのではなく、さまざまな自然現象を最新のコンピューターのシミュレーションで映像化。法堂の後方にあるコンピューターで1秒間に60回計算した画像を生成し、現代ならではの仏法の雨を降らせる龍を描く」と話す。
龍王殿では、脳波計を装着して自分の脳の状態をリアルタイムで可視化する瞑想「音座禅」も体験できる。
今村さんは「情報があふれ忙しい中、テクノロジーや音楽、アートの切り口で、昼間の建長寺とは違う、幻想的なでマインドフルな体験で、脳と心を整えてほしい」と来場を呼びかける。
 開催時間は17時~20時。入場料は、平日=大人3,400円・12歳以下1,700円、休日=大人3,900円・12歳以下1,950円。いずれも6歳以下無料。12月7日まで。