鎌倉の古書・雑貨店「books moblo(ブックスモブロ)」(鎌倉市大町1)と廊下で結ばれた向かいにあるレンタルスペースの2カ所で10月25日、「リン版画工房」による作品展「蔵書票の世界展」が始まる。
工房の会員が自由に使える版画プレス機。同工房では、銅版画をはじめ詩画集、木口木版画、リトグラフ、紙版画、製本、金属活字印刷など、未経験から学んで作品を制作できる
版画制作や出版、教室、出張講座などを行う同工房。城戸宏さん・優子さん夫妻が1990年から美術家・加納光於さんの専属工房として鎌倉市で創業し、1996年からはフリーとなり拠点を藤沢に移して活動を続けている。
版画教室の会員で毎年、自分の好きな詩とイメージした版画を1枚にレイアウトした「詩画展」を行ってきたが、今年は2001年以来2回目の「蔵書票」を展示する。
蔵書票とは、本が貴重な財産だった時代に持ち主を明らかにするため自分の蔵書に貼り付けた紙片。現存する蔵書票はドイツで1400年中期に作られた「ハリネズミ書票」と呼ばれる木版といわれている。芸術家がデザインするケースもあり、美術品としての価値が高く収集家もいる。
同展に向けて約50人の会員が1人2種の蔵書票を制作し、「books moblo」とレンタルスペースに1枚ずつ展示する。レンタルスペースでは壁面に作品の蔵書票を、テーブルには同じ蔵書票を見返しに貼り付けたお気に入りの本をセットにして展示する。蔵書票のほかに、本を選んだ理由などを記した紙も添える。
同スペースでは、26日に新紙版画体験「蔵書票を作ろう」、27日に簡単製本体験「豆本」、28日に木口木版画体験「蔵書票」など未経験でも楽しめるワークショップを用意する。
29日は「蔵書票カフェ&ナイト」を開き、10時~18時はコーヒーやハーブティーを提供する。この日だけ開催時間を20時まで延長し、優子さんによる蔵書票についてのミニ解説から始まり、図書館司書で「books moblo」の荘田祥子さんと小田原ブックマーケットを主催する牛山惠子さんを加えたトークセッション、最後は参加者を交えてフリートークを行う。優子さんは「一杯飲みながら、お薦め本や出版、活字など本にまつわる話を楽しくしたい」と抱負を話す。
宏さんは「2カ所で約100枚の蔵書票を見ることができる。プロの作家ではないので縛りもなく、自由な発想で作られたものばかり。みなさんが楽しんで作っているところを感じながら、『蔵書票』を知っていただければ」と話す。
開催時間は10時~18時。月曜定休。入場無料。「蔵書票カフェ&ナイト」のドリンクは有料。11月8日まで(レンタルスペースは10月30日まで)。