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大船コワーキングの会議室「A」が「栄」に テーブルや椅子が思いつなぐ

会議室「栄」。栄和堂の中央に置かれていたテーブルと椅子を同じレイアウトで置いた

会議室「栄」。栄和堂の中央に置かれていたテーブルと椅子を同じレイアウトで置いた

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 大船のコワーキングスペース「ネクトン大船」(鎌倉市大船1)の会議室が11月1日、惜しまれつつ閉店した市内のブックスペースから引き取った家具や時計などを活用してニューアルし話題になっている。 

会議室「栄」に運ばれた椅子に座る「ブックスペース栄和堂」を運営していた和田親子。「思いをつないでもらえてうれしい」

 大船エリア初のコワーキングスペースとして9月13日にオープンした同施設。にぎやかな駅前商店街に面したビルの4階で、約100平方メートルのゆったりした空間に固定5席とフリー32席、2つの会議室などを用意した。会員制だが2時間や1日単位でも使うことができ、利用者が増えている。

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 「オープン後もずっと気になっていたのは会議室」と話すのはオーナーの安光太郎さん。「以前の入居者から頂いたセミナー用の長テーブルを並べていたので、まるでオフィスの会議室のような無機質な空間だった」と言う。

 オープン前に安さんが何度か訪れたのが、50年近く地域に親しまれながら閉店した書店「栄和堂」の店舗を生かし、2015年にオープンした深沢のブックカフェ「ブックスペース栄和堂」。元店主の弟・和田正則さんと正則さんの息子・淳也さんが店に立っていた。「古くからの書店の名残もあり、温かい空間でとても居心地が良かった。地域の人が自然に集まる場としてお手本にさせてもらっていた」と言う。

 「建て替えのため閉店」の告知が店内に掲示されたのは9月末。「聞けば建て替え後も再開する予定はない、什器(じゅうき)も処分するという。何か残せないものかと考え相談したところ、『あげるから何でも持っていって』と言われ驚いた」と安さん。あらためて店内を眺めてみると、中央に置かれ自分も腰掛けたことのある椅子と大きなテーブルが「ネクトンの会議室にぴったり収まりそう」と直感した。

 閉店から5日後の10月30日に軽トラを借りて運んだ。会議室には「A」「B」の名を付けていたが、テーブルのサイズが合ったのは「A」。搬入すると「冷たい印象だった会議室が温かくなった。発音は一緒だが、この日から『A』ではなく栄和堂の『栄』と思って呼んでいる」。

 今度はこれまであった長テーブルと椅子が不要になり困っていると、「会員が近くの鎌倉芸術館とつないてくれて引き取ってもらうことになった。早速地域でネットワークがつながり不思議な縁を感じた」と振り返る。

 たくさんの人たちに親しまれ、かつては自分も使った椅子に腰掛けながら、「新しくスタートした場所では決してつくり出せない空気を、この家具が生み出してくれている」と安さん。「栄和堂さんの志を継いで、同じ鎌倉の大船エリアを盛り上げていきたい。集う人たちが想像以上の化学反応を起こす場になれたら」と今後の抱負を話す。

 栄和堂に残っていた椅子6脚は会員制図書室「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町1)に譲り、書棚は個人宅が引き取った。和田淳也さんは「『どこかで見たテーブルや椅子だな…』と気付いてもらえればこれ以上幸せなことはない。実はあまり高価なものではないが、少しでも長く使っていただければ」と話す。