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坂倉準三設計の名建築再生 鶴岡八幡宮が「かまきん」の歴史や熱情継ぐ

右隣の新館がなくなり建物が際立つ印象。新設した遊歩道を進み池越しに建物を鑑賞できるビューポイントから

右隣の新館がなくなり建物が際立つ印象。新設した遊歩道を進み池越しに建物を鑑賞できるビューポイントから

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 鎌倉の鶴岡八幡宮(鎌倉市雪ノ下2)は、境内の旧「県立近代美術館 鎌倉」を改修し4月20日、「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」をプレオープン。施設の歴史や建築自体を紹介する「新しいはじまり展」を開いている。

プレオープン後の同館入り口。東側の参道から進むと広い前庭が現れる

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 戦後間もない1951(昭和26)年に日本で初めての公立近代美術館として開館した同館は「カマキン(鎌近)」の愛称で親しまれ、その後各地にできた近代美術館の先駆けとなった。ル・コルビュジエ設計事務所の一員だった坂倉準三の設計で、戦後の建造物としては初めて県の重要文化財にも指定されていたが、2016年3月に県と同宮の借地契約が終了し、惜しまれながら閉館した。

 「更地での返還が条件だったが、ファンも多く日本の戦後モダニズム建築の象徴ともいうべき存在であり、残したいという思いで県とも一致した」と話すのは吉田茂穂宮司。「65年の歴史や伝統の重み、携わってきた熱情あふれる関係者らの意をくみ、引き継がせていただくことに」と続ける。

 閉館後から調査を進め、耐震補強をベースに新館が建設された1966(昭和41)年当時の姿に復元することをコンセプトに改修を始めた。壁の大谷石の石積みを解体し鋼板耐震壁を設置した後、新たに薄くカットした大谷石を貼った。破損や腐食のため1969(昭和44)年の改修時に平面になっていた屋根は当初ののこぎり型に。バリアフリーを実現するために必須だったエレベーター設置は、元控え室を活用することで外観への影響を最低限に抑えたという。

 6月8日のグランドオープンに先駆けた同展では、1950(昭和25)年の設計コンペから今回の最新技術による改修工事までを、図面や模型、実際に使われていた部材の展示、写真や映像などで振り返る。学芸員の川人未来さんは「風や光を感じながら、展示を通して、坂倉準三設計の原点に戻した建物自体を体験し楽しんでいただければ」と話す。5月6日まで。会期中は無休。

 新館を取り壊し、東の参道側を正面玄関にした。西の旧入り口側からは平家池のほとりに回り込み、池越しに建物を鑑賞できる遊歩道も整備した。「流鏑馬(やぶさめ)の馬場を挟んで北側は聖域、南側は憩いのある空間として今後も整備していきたい」と吉田宮司。8月には倉庫跡にカフェとショップをオープンする予定だという。

 吉田宮司は「美術だけでなく、歴史、文化、文学、仏教や禅などを幅広く紹介するビジターセンターの要素を持たせた。ここでの体験をきっかけに、市内各所に足を運んでいただきたい」と来館を呼び掛ける。

 営業時間は9時~17時。月曜定休。入館料は、中学生以上=500円、小学生以下無料。

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