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鎌倉の朝がゆ専門店「叙序圓」が「間借り」から独立移転 夜も台湾家庭料理を

「店の内外装もロゴや看板も全て知り合いが関わってくれた」と店主のJojoさん

「店の内外装もロゴや看板も全て知り合いが関わってくれた」と店主のJojoさん

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 鎌倉駅前で朝の時間のみ間借り営業していた朝がゆ専門店「叙序圓(ジョジョマル)」が若宮大路沿いに移転し、8月23日、「台湾キッチン叙序圓」(鎌倉市雪ノ下1)として夜の営業も始めた。

女性客を中心ににぎわう朝の店内。Jojoさんとの距離が近く、会話を楽しみながら味わえる

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 「40代の頃からリタイア後には故郷の台湾料理の店を出したいと考えていた」と話すのは、店主のJojo(ジョジョ)さん。台湾で結婚してすぐの1982(昭和57)年、26歳で来日。会社員として事務や総務、人事、営業などさまざまな職種を経験してきたが、飲食とは無縁だった。昨年3月の引退を機に、市内2つの飲食店でアルバイトを掛け持ちしながら現場を学んだ。

 「朝だけできる店がある」と連絡を受けたのは4カ月後。Jojoさんから夢を聞いていた友人が、鎌倉駅西口ロータリーに面したレストラン「トラットリア・イノウエ」の営業前の朝に利用できると教えてくれた。「もともと朝がゆを出したかったので理想的だった」と振り返る。

 「朝がゆ」には、台南の田舎町で生まれ育ったJojoさんの思い出が詰まっている。「鐘の音とともにおじさんが屋台を引いてやって来る。幼い妹や弟を連れて、20~30種類並んでいるおかずを選ぶのが毎朝の楽しみだった。帰ると母が大きな器で用意していてくれる熱々のおかゆと一緒に食べた」と懐かしそうに話す。

 間借りして始めた朝がゆの「叙序圓」では、かゆを3種、日替わりの小鉢を8~10種用意し自由に3種選べるセットを提供した。バイキングとは異なる珍しいスタイルや味が評判となり、周辺に朝早くから開いている飲食店も少なかったことから、すぐににぎわった。

 東京や横浜への通勤客だけでなく、鎌倉で働く人も来店した。「電車の時間が迫っているという人に、ほかの人が順番を譲ってくださることもあった」と言う。情報誌に取り上げられると、大阪から夜行バスで7時に着いたばかりという客が「『鎌倉観光ではなくここで朝食を食べたくて』とおっしゃり感激したことも」と笑顔を見せる。

 間借り営業を続けるうちに「朝だけでなく、昼や夜にも台湾の普通の家庭料理を提供したい」という思いが強くなり、新たに店探しを始めた。たまたまランチに訪れた店で話をしていると、店主から同じフロアのブライダルサロンが撤退するという情報が。早速、同ビル内の管理会社に問い合わせて内覧させてもらい、その場で決めてしまった。

 「自分ともう1人くらいで切り盛りできるスペースなのでちょうどよかった。あまり繁盛すると大変だから」と笑う。席数はカウンターのみの9席、店舗面積は約25平方メートル。

 「オープンキッチンなので、壁は無機質なステンレスではなく温かみを持たせたかった。でも資金が足りなくなってしまった」ため、急いでクラウドファンディングを立ち上げると目標額を大きく上回る支援が集まり、白いレンガ風の壁に仕上がった。

 「クラウドファンディングをはじめ、ロゴのデザイン、ショップカード、パンフレット、SNSなども知り合いがどんどん進めてくれてありがたかった」と感謝を口にする。開店前日に様子を見に来てくれた知り合いの黒板アーティストは「2階の奥なので目に止まるように」と、その場で立て看板を描いてくれた。開店日の朝、通りに立てると「表の看板を見て」「朝食の店ができたんですね」と早くから客がやってきたという。

 メニューは、朝食のかゆは「白粥と小鉢3品」(500円)、「肉きのこ粥と小鉢3品」「日替り粥と小鉢3品」「3種の朝粥と小鉢」(以上900円)。ちまきは「ちまきとスープセット」(500円)、「ちまきと白粥(小)と小鉢3品」(800円)、「ちまきと日替り粥と小鉢3品」(950円)など。薬膳スープ肉骨茶(パクテー)の単品やセットも用意する。

 夕食は、「台湾腸詰め」「水餃子」「麻婆豆腐」「トマトとたまご炒め」(以上700円)、「よだれ鶏」(800円)、「ハチノスと豆板醤炒め」(1,200円)、「沙茶牛肉」(1,500円)など。「いつも食べていた台湾の家庭料理を日替わりで出していく。余裕が出てきたらランチも始めたい」と意欲を見せる。

 「ゆっくり流れる時間が故郷と似ていて、海や山もあって居心地がいい」と17年前に鎌倉に移住。「出会う人、出会う人がいい人ばかり。自分の方が年上なのに、なぜか皆さんがかわいがってくださる」とJojoさん。毎朝、市内の自宅から江ノ電の始発に乗って通勤し準備を進め笑顔で客を迎えている。「皆さんと話すのが楽しい。お客さま同士がつながっていくのも小さな店ならでは」とうれしそうに話す。

 夜の部は甥(おい)のショーさんと2人で担当。Jojoさんは21時ごろには帰宅し、以降24時まではショーさんが1人で軽食やつまみ、アルコールを提供するバータイムとなる。「残念ながら日本で生まれ育ったショーは中国語も話せないし、台湾料理も作れないけれど」と笑う。

 「駅からは離れてしまったが、いつも通りの朝ご飯に加え夜ご飯も用意している。台湾の家庭料理で、鎌倉の朝も夜も楽しんで」と来店を呼び掛ける

 営業時間は6時30分~10時30分、17時~24時(バーは20時~)。火曜、第1・3水曜定休。

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