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鎌倉で「自力葬」サービス始まる 「自宅葬」の経験生かし個人での葬儀をサポート

オンラインでサポートする「自力葬」は葬儀コンシェルジュの馬場さんが対応する

オンラインでサポートする「自力葬」は葬儀コンシェルジュの馬場さんが対応する

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 鎌倉自宅葬儀社(鎌倉市御成町)が6月10日、個人の力で葬儀を行う人のためにオンラインでサポートする「自力葬」サービスを始めた。

遺体の足元に故人の愛犬が添い寝していた

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 同社は近年、従来の大掛かりな葬儀ではなく近親者などで小規模に行う家族葬が増えてきたことから、2016(平成28)年、故人の住み慣れた自宅から送り出す「自宅葬」専門の葬儀社として誕生した。

 創業の地に鎌倉を選んだ理由を同社は、持ち家比率が65%(鎌倉市ホームページ)と高く、介護や最期を迎えたい場所として自宅を希望する高齢者が50%以上(平成26年度鎌倉市高齢者保健福祉に関するアンケート調査)とする。

 一方で、同社葬儀コンシェルジュの馬場偲さんは「5年やってきて問い合わせの数は4割が県外からだった」と振り返る。「全国的に需要はあり、実際に茨城、静岡、名古屋、大阪などに出掛けて自宅葬を行なった。移動時間こそかかるものの、さまざまな手配などを事前に行なうことで、遠方でも鎌倉と変わらず自宅葬ができることが分かった」と話す。

 馬場さんは、故人の趣味の作品で部屋を埋め尽くしたり、愛用のベッドを花で飾り安置したり、棺(ひつぎ)や骨つぼに遺族が絵や文字を描いたりするなど、故人を思う気持ちを表現したシーンを数多く目撃してきたという。「故人を忍ぶ時間と手間をたっぷり取ることができる自宅葬だからこそ実現できたことばかり。その一つ一つが新たな経験となり、次に生かすことができる」と話す。

 「娘さんやペットが一緒に添い寝する姿を見たときは感動した」という馬場さんは、自宅葬の価値を改めて教えられたと振り返る。「今後もこちらから提案するというよりも、遺族の希望にできるだけ応える形でお手伝いしていきたい。前例がなくても、実現する前提で考えることが大切」と続ける。

 昨年、馬場さんはインターネット上で「DIY葬」が話題になっていることを知る。家族が亡くなった時点から、手続きや葬儀などの全てを自分たちだけでやってみたという記事だった。今や棺も骨つぼも死に装束などもネット通販で購入できる時代。「自宅葬」から自分たちの手で完結するスタイルへ少しずつ動き始めていることを感じ取ったという。

 「葬儀の全てを自分たちでできるとしても、ほとんどの人にとっては初めての体験。精神的にも不安定な中、落ち着いて対処できるとも限らない。遺体のケア一つ取っても実際には難しい」と考えた馬場さんは、葬儀に関わる相談窓口の必要性を感じ、「自力葬」サービスを立ち上げたという。

 同サービスの全てをオンラインで行うため、全国どこからでも申し込みを受け付ける。ウェブ上で依頼者が事前相談チェックシートに必要事項を入力するところからスタート。自宅の様子や希望などを質問し、プランを提案。契約成立後、現地の火葬場など詳細の調査を始める。危篤状態からの対応、手配などを説明し、その後の質問や補足説明などは随時チャットで対応する。料金は5万5,000円。遺体のケアについてはレクチャーだけでなく、実際のケアも請け負う。

 「『家族の死が迫っている』『元気だった知人が急死して不安になってきた』『身寄りがない』『誰に任せていいのか分からない』などの理由で、すでに問い合わせも多い」と手応えを感じている馬場さん。「自力といっても、何から何までやり切ろうと気負わず、何でも聞けるところがこのサービスの特長。事前に少しでも葬儀に関わる情報を知っていれば不安も減る。相談は無料なので、まずは連絡を」と呼び掛ける。

 コロナ禍が続き、自宅葬に関する問い合わせ数も昨年1月~5月の2倍になっているという。馬場さんは「今後は自力葬のニーズも増えていくはず。これからもさまざまなスタイルでの葬儀をサポートしていきたい」と意気込む。

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