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鎌倉の「佐助カフェ」、飲食とアートと福祉が交わる場目指し新たな展開へ 事業承継も視野に

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 鎌倉駅西口から銭洗弁財天方面へ15分ほど歩くだけで、建物の多い駅周辺とは一転、新緑に包まれる谷戸になる。そんな道路沿いに、切り妻屋根が特徴的な建物が現れる。国内外の金融機関などの最前線で活躍してきた店主の島崎亮平さんが、学生時代からの夢をかなえ、58歳だった2019年にオープンした「佐助カフェ」だ。コロナ禍も乗り越え経営は順調そうだが、5年目の区切りとして新しい展開に踏み出そうとしている。

 店舗面積は82平方メートル、席数は室内とテラス合わせて22席。メニューは、オリジナルブレンドのコーヒーをはじめとするドリンク類、餅粉100%で「どら焼き」仕立ての「佐助焼き」やソフトクリームなどスイーツ類、カレーなどランチメニューもそろえる。

どら焼き仕立ての「佐助焼き」は餅粉100%

 

 カフェとしての営業のほか、ワークショップやライブ、向かいに新設したギャラリースペースでのアート作品展なども開催。毎年1月に開く、プロ・アマ問わず100人以上が出点する公募展「かま展」にも多くの人が訪れている。

インタビューに答えてくれた店主の島崎亮平さん

 

ーーアートに力を注いだ経緯を教えてください

 人が行き交い、出会う場にするため、アートや本もその媒介になればと考え、設計の段階から展示を前提とした壁面や本棚を設置しました。鎌倉や湘南エリアの多くのアーティストたちともつながりができ、おかげさまでギャラリーは数カ月先まで予約で埋まっています。

大きな窓と白壁の明るい店内

カフェの向かいにあるギャラリースペース

 この夏には市内のギャラリーと共同で、障害者と健常者が隔てなく出品するアート展を開く予定です。引き続きアートには力を入れていきますが、実はもう一つ取り組んでいきたいことがあります。

ーーアート以外?

 はい、地域の福祉です。周辺には高齢者が多く、独居も目立ちます。こうした地域の課題を解決するためのスペースとしても機能させたいと思っています。

ーー具体的に教えてください

 きっかけは、80代の女性スタッフの存在です。引きこもりがちになる高齢者が多い一方で、彼女は元気で毎日楽しそうに働いてくれています。例えば、定休日に料理好きな高齢者が集まって弁当を作り、外出できない高齢者宅に届けるような仕組みができないかと。ここの設備を使って、皆さんで楽しく取り組めそうです。

ーーすてきな取り組みですね

 ところが、残念ながら今のところ、実行するまでに至っていません。当初はお客さまのほとんどが地元の方でしたが、最近では半数が観光客になりました。忙しくて以前のように、地元の方としっかりお話しできないこともあります。自分がメインで運営をしているうちは、なかなか取り組めないので、飲食部門だけでも誰かに担ってもらいたいと考えるようになりました。

ーー事業承継ということですか

 求人こそするつもりはありませが、飲食経験者であれば、思いに共感してもらえるような人に出会えたら任せてもいいと思っています。この規模の店舗経営の経験がなくても、時間をかけて伴走していくつもりでいます。

ーーどんな人に出会えたらいいでしょう

 実は1月に体調を崩したこともあり、飲食は長く続けられる若い人がふさわしいと実感しています。ところが、賃料や食材の高騰などにより、若い人は挑戦しにくい環境になっています。だからこそ若い人を応援したい。思いを継いでくれれば、好きなことをやってもらっても構いません。

ーー任せることができれば、いよいよ地域に軸足を移していくことができますね

 オープンから5年、世話になっている地域の拠点になれるように、早めに新たなチャレンジをしていきたいですね。

 

 若い力でカフェが活性化し、アートを媒介に人がつながり、さらに福祉を加えて地域との関わりが深まっていく――そんな新しい展開の「佐助カフェ」に期待したい。

 

世界を股にかけた金融スペシャリストが転身 学生時代の夢かなえ鎌倉にカフェ(鎌倉経済新聞)

佐助カフェ

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