鎌倉市は2月17日、長谷寺所蔵の「大黒天立像(だいこくてんりゅうぞう)」、浄妙寺所蔵の「神明鏡(しんめいきょう)」、大倉幕府跡から出土した「雅楽器文鏡(ががくきもんきょう)」の3件を新たに市の指定文化財に加えると発表した。
鎌倉市教育委員会の2月定例会で議決された。今回の指定により市内の指定文化財は国宝15件、国指定重要文化財など201件、県指定重要文化財など66件、市指定文化財318件、合計600件となった。
大黒天立像は室町時代に作られたもの。高さは62センチ。烏帽子(えぼし)をかぶり、顔は正面に向けて両目尻を下げ、口角を上げ微笑の相を表している。スギとみられる粗い木材から丸彫りされている。表面は古色を塗った面が多く、当初の仕上げについては明らかでない。背面には応永19(1412)年と、像を造るに際して書かれた墨書が確認されている。全国的にも古いもので、東日本でこれより古い大黒天像は知られていないという。長い間、長谷寺(鎌倉市長谷3)境内の大黒堂に安置されていたが、現在は同境内・観音ミュージアムに移され保管されている。
神明鏡は神武天皇から後花園天皇の永享6(1434)年正月までの出来事を記した歴史書。著者は不明。浄妙寺本は江戸時代前期の写本で、上・下巻の2冊で構成されている。他の写本には見られない独自の省略や改変があり、伝来過程の究明において貴重な役割を果たすと期待される。鎌倉国宝館(鎌倉市雪ノ下2)で展示されている。
雅楽器文鏡は2014年、鶴岡八幡宮境内から東へ約300メートルの場所に位置する埋蔵文化財包蔵地・大倉幕府跡で出土した。円型で面径は11.2センチ、重量234.1グラム。鎌倉時代初期に作られたと考えられる。保存状態が良く、当時の鋳造(ちゅうぞう)技術の高さがうかがえるのとともに、背面には鈕(ちゅう)と呼ばれるつまみや、雅楽で用いられる楽器や小道具、鳥などの細かな文様を観察することができる。出土地点の層位から使用期間が明らかである点、また類例の非常に少ない雅楽の楽器・小道具を背面文様としていることが貴重であると評価された。こちらも鎌倉国宝館で展示されている。