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若宮大路の「犬猫病院」解体工事始まる 戦前のモダニズム建築物に惜しむ声

解体工事の準備が始まりフェンスが設置された。奥にサクラの木と右端には二の鳥居

解体工事の準備が始まりフェンスが設置された。奥にサクラの木と右端には二の鳥居

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 鶴岡八幡宮の参道である若宮大路に面した一角に建つ「犬猫の峰病院」の解体に向けての作業が5月21日に始まった。5階建てマンションへ建て替わる。

敷地は奥行きがあり左手が診療所で右が住宅。空気を床下から取り込み軒下から外へ逃がす流れを作る長方形の開口が建物全体に見える。当時のバウハウスが目指した「健康住宅」の特徴でもあるという

 同建物は山脇巌さんが設計し1934(昭和9)年に完成した「診療所をもつ住宅」。山脇さんは、約100年前にドイツで14年間だけ開講し、その後の美術や建築などに大きな影響を与えた芸術学校「バウハウス」で学んだ4人の日本人のうちの一人で、写真家・建築家として活躍した。

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 山脇さんが設計したモダニズム建築で、現存する数少ない作品の一つでもある同建物。若宮大路の二の鳥居近くで観光客の目にも触れる場所に建っている。敷地面積は約1183平方メートルで、延べ床面積は約455平方メートル。近年診療は行っておらず、4月25日に設置された表示版で建て替えが公になった。

 解体を知った市民有志の会が動き出し、5月14日・16日、事業者の好意で建物の調査を行った。参加したのは専門家40人とスタッフ20人。近代建築やバウハウスの研究者、大学教授などが「登録有形文化財や重要文化財クラスの建物」「一部傷みがあるものの全体としては十分活用できる」と評価した。今後は調査報告書にまとめ発表するという。

 調査の様子を道路から見ていた近所に住む主婦は「庭先のサクラの大木はずっと段葛の風景の一部だった。せめてサクラだけでも残してほしい」と話し、近代建築物を見て歩くのが好きだという市内在住の男性は「特徴ある建物だとは思っていたが、歴史的にも貴重な建物であることを知って驚いた。もっと早く保存や移築をするために動き出せばよかったのに」と残念がった。

 有志の会の野村和代さんは「古い建物と新しい建物が共存する今の鎌倉を残してくれたのは前の世代。私たちもできるだけ古い建物を次の世代に残していくことができれば」と話す。

 今後は6月から本格的な解体工事に入り、発掘調査などを経て2019年5月に着工。マンションの完成は2021年3月の予定だという。