鎌倉市役所(鎌倉市御成町1)で10月15日、「平成30年度鎌倉市 市民栄誉表彰式」が行われ、鎌倉市在住で児童文学作家の角野栄子さんが表彰された。
表彰式後の記者会見で質問に丁寧に答える角野さん。「受賞後、鎌倉を歩いているとたくさんの方から『おめでとうございます』と声を掛けていただきうれしい」
芸術やスポーツの分野で輝かしい功績をあげ、市民に希望や活力を与えたと認めた市民を表彰する同栄誉表彰。本年度は3月に「国際アンデルセン賞」の作家賞を受賞した角野さんに授与した。
「国際アンデルセン賞」は、国際児童図書評議会(本部スイス)が子どもの本に長年貢献してきた作家の業績に対して隔年で贈られ、「児童文学のノーベル賞」ともいわれている。作家賞は「ムーミン」シリーズのトーベ・ヤンソンさんも受賞しており、日本人では3人目の受賞。
角野さんは1935(昭和10)年に東京深川で生まれ、1970(昭和45)年に「ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて」でデビュー以降、子ども向けの作品の執筆や翻訳を手掛けてきた。1985(昭和60)年から出版された「魔女の宅急便」シリーズは9カ国語に翻訳され、世界中で読まれ映画化もされている。2000年に紫綬褒章を、2014年には春の叙勲で旭日小綬章を受賞している。
表彰式であいさつした松尾崇鎌倉市長は「文化史に残る輝かしい功績をあげた角野さんが鎌倉市民であることを誇りとして、市も文化の発展にさらにまい進していきたい」と話した。
式の後の会見で角野さんは「このまちの名前が付いた賞はとてもうれしくありがたい。(鎌倉が)好きで選んで18年前に引っ越して来て、これからもずっとここに住むつもり」と話し、「今回は(市に対して)いろいろ言う権利をいただいたと思っている。聞いていただけますか」と笑顔で尋ねた角野さんに、同席した市長が「もちろんです」と慌てて返す場面も。
さっそく「歴史や文化は大事だし宝物。今から持とうと思っても持てない。何百年という歴史があってこそ持てていることを理解し大切にしてほしい」と市長に要望を投げ掛けると、「変えるべきところ、変えてはいけないところを見極めながら、受け継いだ大切なものを50年先、100年先まで守っていくのも行政としての使命。話をうかがいながら、より良いまちづくりにつなげたい」と答えた。
「子どもの本を書いているので、子どもたちと接することができたら」と思い、鎌倉文学館(鎌倉市長谷)で始めた朗読会「おはなしの扉」をほぼ毎月開いている角野さん。「会場では子どもたちとの距離が近く反応が楽しい。何年もやっているので、始めの頃から来ている子がだんだん大きくなる様子を見るのもうれしい。続けていて良かった」と振り返る。
今後の執筆について問われると「残り時間は少ないので書くだけ。いつか鎌倉を舞台に書こうとも思っているが、これまでにもたくさんの方が書いているので、私らしい個性が出る作品が書けると思うときが来たら」と話した。