鎌倉の報国寺近くの住宅街に2月15日、スパイスカレー&カフェ「chuchu ponpon(チュチュポンポン)」(鎌倉市浄明寺2)が開店した。
ライスは玄米ミックスで、沖縄やちむんの作家さんの皿に載せて。熱々の鉄鍋のルーには季節の野菜も
報国寺や杉本寺、浄明寺などの古刹(こさつ)が沿道にあり、車や人の往来が多い金沢街道。同店は、平行して山際を蛇行している細い路地「田楽辻子(でんがくずし)の道」の一角に立つ住宅を改装した。
おととしの12月、初めて訪れた店主の谷口英樹さんは「曲がりくねった細い道の両側に住宅が並び静かな雰囲気が良く、その場で決めてしまった」と話し、妻の千晶さんは「家の中でも息が白くなったほど寒い場所だったけれど」と笑う。
5年ほど前、東京住まいだった2人は観光で訪れた鎌倉がすっかり気に入り、翌年には大船駅の近くに引っ越した。住み心地が良いことを実感する一方、休日には2人で市内を歩き回った。以前から漠然と描いていた「将来は店を開きたい」という夢が、鎌倉に来て少しずつ具体的になっていったという。
2017年には市内で開かれた「鎌倉でお店を持つ講座」に参加し、個人による出店で成功している先輩たちの話を聞いた。最後に発表する決意表明ではボードに「3年後までにカレー屋をオープンする」と書いた。
その年の秋には物件探しを始め昨年3月に引っ越し、工事は8月から開店前まで続いた。長く掛かったのは、「より良い空間にしたくて、工務店さんとじっくり話し合いながら進めたから」と言う。前職まで技術畑を歩んできた英樹さんらしく、実験や検証を繰り返すように「椅子やブラインドなども、まずは1つだけ購入して実際に置いて確かめてみてから決めていった」と振り返る。
もともと料理好きだった英樹さんがメニューにカレーを選んだのも「もちろん好きだからだが、カレーはスパイスや食材、油など要素が多く、しかもわずかのバランスの違いでも変化する。それを再現していくのも楽しい作業で、料理なのにまるで実験のよう」と目を輝かせる。
「これまでカレーを食べ歩いてきたが、軽くすっきり食べられるものもあれば、もたれたり、眠くなったりとさまざまだった。食べることは大好きなのに実は胃腸が強くない」と笑う英樹さんが、自分にとって負荷が少ないように作っているうちにたどり着いたのが、小麦などを使わないグルテンフリーや乳製品を使わないカゼインフリーだった。
メニューは、骨付き肉入りの「チキンカレー」(1,100円)、蒸して脂分を落とした肩ロース角煮入りの「ポークカレー」(1,250円)の2種で、野菜サラダ付き。「タマネギを大量に使うことでスパイシーな中にも甘みとうま味を感じてもらえるはず。癖のない圧搾(あっさく)ナタネ油は、カレーの味を邪魔することなく、胃もたれすることがない」と自信をのぞかせる。
「熱いまま食べていただきたいのと、ルーがサラサラなのであらかじめ掛けておくとライスに染み込んでしまうから」と、ルーは鉄鍋で、ライスは皿で提供する。
「蒸しパン」(300円)、「米粉の抹茶ケーキ」「ブラマンジェ」(以上400円)など自家製のスイーツも全てグルテンとカゼインを含まない。ドリンクは、コーヒー、紅茶、オレンジジュース、アップルジュース(450円)、豆乳カプチーノ、ビール(500円)なども用意し、カフェとしても利用できる。
店舗面積は約30平方メートル、席数は19席。床や柱、テーブル、ブラインドなどは木製で、「あえて光沢を出さず、新しいのに少しレトロっぽいイメージにした」という店内は落ち着いた雰囲気。奥の窓の外に広がる緑は報国寺の境内に続いているという。
店名は、乗り物や鉄道が好きな英樹さんが蒸気機関車の「シュッシュッポッポ」をかわいい響きにアレンジした。
千晶さんは「地元の方や女性客に加え、男性1人での来店も多い。『この道沿いには飲食店がなかったのでうれしい』と言ってくださる方も」と話し、英樹さんは「料理は場所や雰囲気とともに居心地のいい空間を構成する要素の一つ。観光地だが住宅街なので、家のようにゆっくりくつろいでいただければ」と来店を呼び掛ける。
営業時間は11時~17時。火曜。水曜定休。