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鎌倉に「山と道研究所」 ハイキング用品メーカーが開設、週末限定ショップも

併設の週末限定ショップにはオリジナル商品が並び、実際に手に取って試すことができる

併設の週末限定ショップにはオリジナル商品が並び、実際に手に取って試すことができる

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 ハイキング用品を開発・製造・販売する「山と道」(鎌倉市材木座1)が4月20日、研究開発拠点であり週末限定のショップ「山と道研究所」を開いた。

扉の前に立つ夏目さん。ローカルな雰囲気の材木座の町で印象的なブルーは同社のイメージカラー

 2011年に社長の夏目彰さんと妻の由美子さんが同市極楽寺で設立した同社。会社勤めでは山へ行くための長期休暇が取りにくく、「自分が山の道具を作る仕事を始めれば、いくらでも山に行けると考えたのがきっかけ」と笑って振り返る。

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 初めて出掛けたのは尾瀬。東京から数時間で美しい自然と出合えることに驚き、週末には各地の山に通うようになった。通ううちに、もっと使い勝手のいい道具や服を作りたいという思いが膨らみ退職した。

 由美子さんはそれまで衣装製作を仕事にしていたものの山の道具に関しては経験がなかったため、2人で試行錯誤しながら、まずはバックパックを手作りしていった。「今度は堂々と仕事として山へ通いテストを続けていた」中、思わぬトラブルから第1号の商品が生まれる。

 冬の屋久島で10年に1度とされる降雪があり、先へ進めず1晩を過ごすことに。寒さをしのぐものはないかと試作中のバックパックの中を調べていると、背中に当たる部分のテストをしていた素材があった。取り出し広げて寝袋に入れると思いのほか温かかったという。

 帰社後、その素材でスリーピングマットを試作。「できたばかりの小さなメーカーなので、話を聞いてくれる企業も少なく苦戦。たまたまアメリカでのロングトレイル経験のある方が担当だった企業が共感してくれ、工場も紹介してくれた」ことで一気に商品化が進んだ。「当時、世界で最軽量といわれていた既製品の半分以下の重量を実現」し、わずか半年で販売にこぎ着けた。ブログでしか発信していなかったにもかかわらず人気商品になったという。

 「実はマットの例はまれで、通常は商品化に最低でも1年から数年は掛かる。バックパック一つ作るために1000キロ以上歩いた」と夏目さん。日本で販売されている欧米のバックパックはウエストベルト荷重型。「手を使わず歩ける欧米の山と異なり日本は急斜面や岩場も多く、手を使ったり足を大きく上げ下げしたりする場面も多い。ウエストベルトが動きづらくしていることに気付いたのも、長く歩いていたからこそ」と言う。

 腰が自由に動かせるよう背中全体で背負う構造で軽量化し、日本の山で使うのに最適な「mini」というバックパックが出来上がった。

 今や山歩きには必需品のスマートフォン。「動きを妨げず入れていることを忘れてしまうような、それでいてすぐに取り出せる専用ポケットを付けたパンツ」も、長い山歩きを続ける中で生まれた商品。

 「山歩きは商品開発に欠かせないが、研究やテスト、試作、情報収集や資料整理のほか、スタッフがちゃんと話ができる場が欲しかった」と大町にあった本社を移転し、同研究所として再出発した。あえて研究所と命名したのは「常に研究を続けているという姿勢を示したかったから」と言う。

 同社の商品販売はオンラインショップがメインで、以前は商品を手に取るためには予約が必要だったが、現在は土曜・日曜は実店舗としてオープンしている。

 「そもそも鎌倉を選んだのは暮らしと山が近かったから。山は低いが、どこに住んでいても歩いて数分で行ける場所は日本にそうはない」と夏目さん。「ハイキングするには絶好のロケーション」で、スタッフが増えた現在も毎週金曜には「みんなで近くの山を走ったり、ハイキングしたりする」と言う。

 スタッフには通常の有給のほかに、「山休」も有給で40日支給。7月には1カ月使う計画の新入社員もいるという。「山に関することは全て仕事であり遊び。山へ行けばさまざまな体験があり、トラブルからも見えてくることがたくさんあり、勉強になってすごく楽しい。これからも積極的に山に行き、自分たちが満足できる道具を作り世の中に送り出したい」と意気込む。

 「商品は売れば終わりでなく、どこで使うか、どう使うかで真価が発揮される。そのためには山を経験し、いい仲間を増やし、どうやって楽しんでいくかが大切」で、各地のハイカーたちのコミュニティーを育てつないでいく活動「山と道HLC(ハイク・ライク・コミュニティー)」も始めた。

 夏目さんは「山に行ったことがないなら、ぜひ行ってほしい。できるだけ身軽に山を歩き寝てみると、シンプルな道具だけで生活できることに気付き、物の本質を理解することにつながるはず。私たちの道具を通してハイキングをより深く楽しんでただければ」と話す。

 ショップの営業時間は12時~18時。土曜・日曜のみ営業。

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