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鎌倉小町の路地裏にジャズ喫茶 禁煙で昼間のみ営業も話題に

「リクエストにも応えます。好きなジャズを探して」と店主夫妻。レコードやCD約3500枚が壁面に並ぶ

「リクエストにも応えます。好きなジャズを探して」と店主夫妻。レコードやCD約3500枚が壁面に並ぶ

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 鎌倉の小町通り近くに3月30日、「Jazzの泉」(鎌倉市雪ノ下1)が開店し、小さいながらも従来のイメージではない明るく開放的なジャズ喫茶として話題になっている。

「なかなか到着せずにやきもきした」というJBLのスピーカー。ディスプレーには流れているアルバムのデータを表示

 同店があるのは平日でも観光客でにぎわう小町通りと若宮大路を東西に結ぶ道から脇に入った小道の奥。静かな路地に数件の飲食店が並ぶ一角で、奥から2軒目のガラス扉を開けると、店主の吉村二郎さん・久美さん夫妻が迎えてくれる。

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 「2人とも元銀行員で、飲食やサービス業の経験ゼロ。1カ月たった今でもドタバタしている」と二郎さん。久美さんも「お客さまが少ないとホッとすることも」と笑い合う。

 ジャズ喫茶を開くのは、現在60代の二郎さんにとって若い頃からの夢だった。学生時代に聞いたジャズに魅了されレコード収集を始めた。就職後、赴任先のアメリカでは日本よりも廉価で手に入るため買いあさったという。1950年代~1960年代のモダンジャズを中心にフュージョンまで幅広くそろえ、今ではレコード約1500枚、CD約2000枚に。購入した日や店名をはじめ曲目、演奏者のデータなど全てを記録してきた。

 定年退職後、ファイリングしていた記録をもとに、自宅でデータベースを作る作業を始めた。二郎さんは「ついつい熱中してしまうため引きこもりになってしまいそうだった」と言い、ミシン刺しゅうが趣味の久美さんも「始めると一日中、部屋に閉じこもっていることも多かった」と話す。「そろそろ外へ出るタイミングかもしれない」と、二郎さんの夢の実現に向けて2人で歩き出した。

 物件を探し都内や横浜を回ったが、銀行員時代に数年勤務し「歴史や文化を感じながらジャズ喫茶にも通った思い出の場所」という鎌倉の物件と出合い、久美さんの親類が市内に住んでいたこともあり決めた。

 「ビジネスというよりも趣味の延長のようなスタンスなので、通りに面しているよりも奥まったここが正解だった」と2人は口をそろえる。店舗面積は約26.4平方メートルで、席数は12席(テーブル8席、ソファ2席、カウンター2席)。アメリカから取り寄せたというJBL製スピーカーの前には体を包み込むような大きなソファを置いた。心地よさからか居眠りしてしまう客もいるという。

 オーディオラックは機器の、食器棚は収納するカップなどのサイズから設計した特注品。店内はブラウンと白の落ち着いた雰囲気で統一した。「ジャズ喫茶といえば薄暗くタバコの煙が満ちて、話をするとにらまれるイメージだが、明るくカジュアルで自由に会話ができる雰囲気にした」と話す二郎さん。アルコールは提供するが、夕方までの営業で終日全面禁煙にした。子ども連れやハイキング帰りの客などがホッと一息つく姿もあるほか、うわさを聞いて県外から訪ねて来るコアなジャズ喫茶ファンにも好評という。

 ドリンクメニューは「ドリップコーヒー」「エスプレッソ」(600円)、「カフェオレ(ホット/アイス)」「アイスコーヒー」(650円)、「ハンドプレスシトラスジュース」(750円)、「鎌倉ビール」「悪魔の蔵ワイン」「ハイボール」(700円)。「ピクルス」(300円)、「お菓子のミックスタワー」(400円)、「チーズ盛り合わせ」(700円)などつまみは用意するが、食事はない。

 店名は、二郎さんが憧れていたシカゴのジャズクラブの名にしようと考えていたが、久美さんの提案で直前に変更することになった。「泉」は、ずっと応援してくれていたが開店を待たずに病気で亡くなってしまった二郎さんの姉の名前。「和のイメージだが、かえって鎌倉にもぴったりになった」と振り返る。その後、ロゴマークやショップカードなどのデザインを泉さんの親友が手掛けてくれることになり縁を感じたという。

 二郎さんは「引きこもっていたら絶対に体験できないことばかりの毎日。すでにサラリーマン時代にもなかった出会いもたくさんあった」と話し、「ジャズ好きでなくても心地よい音楽を楽しめるはず。気軽に非日常を味わいにきて」と来店を呼び掛ける。

 営業時間は11時~18時。木曜定休。

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