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鎌倉で「本を嗅ぐ会」 本持ち寄り、書店で嗅ぎまくり「禁断の扉開いた」

持ち寄ったり、購入したりした本を嗅ぐ参加者。息づかいだけが響く

持ち寄ったり、購入したりした本を嗅ぐ参加者。息づかいだけが響く

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 鎌倉の会員制図書室「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町1)で12月6日、持ち寄ったり買ったりした本の匂いを嗅いで語り合うイベント「本をかぐ会」が開かれた。

書店で本の匂いを嗅ぐ参加者たち

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 「子どもの頃から本の匂いが大好きだったが、最近は周囲に話すとほとんど相手にされない」と笑うのは、主催した樋渡茉佑子(ひわたりまゆこ)さん(25歳)。「きっと好きな人はほかにもいるはず。とりあえずやってみよう」と企画し、フェイスブックで呼び掛けた。

 当日は、「自分と同じような人がいて驚いた」という人から「興味だけで申し込んだ」人まで男女6人が集まった。樋渡さんが趣旨や思いを話した後、同じ通りにある「松林堂書店」に移動した。

 「ドアを開けた瞬間から本屋さんの匂いがしてうっとり」と参加者の十川美和子さん。同店には事前に許可を得ており、「どんな人たちが来るのか楽しみにしていた」と店主の小田切壽三さんらが笑顔で迎えた。

 「最近は雑貨やカフェとの併設や駅ビルなどオープンな店が増え、書店独特の匂いが薄れている。ここはいい意味で閉ざされた空間だから、本の匂い好きにはたまらない書店」と樋渡さん。参加者たちは店内を行き来しては本を手にして鼻を近づける。

 「人生初の書店での嗅ぎ比べにドキドキ」と言う十川さんは、「大人として節度を持って嗅いでいたが、途中から夢中になってしまった」と振り返る。

 20分が経過し同店を後にしたが、ほとんどの参加者がお気に入りの本を見つけて購入したという。会場に戻って、買ったばかりの本や各自が持参した本を嗅ぎ合った。

 「きつい匂いがする」「甘い」などの感想から、次第に「まろやか」「堅い」「カカオ臭」「おばあちゃんのタンスの匂い」「かなりセクシー」などと表現も深まり、「作家や内容によっても異なるのではないか」「あと4~5年すると匂いも熟成しそう」などと言い出す参加者も。

 「呼ばれている気がして参加した」という熊谷サトミさんが持参したのは、中村汀女著「その日の風」。約10年前に古書店で「著者の着物を思わせるいい香りがして」購入したという。箱に入った同書を手に取って嗅ぎ合った参加者たちは「古書独特のかび臭さがないのは、箱入りだからではないか」と分析し、「著者や文章の雰囲気と相まって味わい深くなっている」などと評していた。

 「紙質、インクの違いだけでなく、置いてある環境、時間の経過などで匂いが違う」「同じ文庫本でも出版社によって異なる」「新刊、児童書、雑誌、ビジュアル本などそれぞれに固有の匂いがある」など感想を交わした参加者たちだが、本の匂いを嗅ぐ喜びという「禁断の扉を開けてしまった」と口をそろえ盛り上がった。

 樋渡さんは「形ある本だからこその醍醐味(だいごみ)をあらためて実感できた」と話し、「書店に行くと便意を催すという『青木まりこ現象』にも興味があるし、ゆくゆくは印刷工場や製紙工場の見学もしたい」と今後を見据える。「ただ、参加したかったという声も届いているので、同じプログラムでもう一度やることにした」と、1月24日に開く。開催時間は、18時~20時。参加費は1,000円。先着10人まで受け付ける。

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