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明治時代に鎌倉観光ガイドも発行 駅前の老舗書店が惜しまれつつ閉店

感謝の記念スタンプの押印サービス中。「気軽にお声掛けを」

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 創業から100年以上の「鎌倉松林堂書店」(鎌倉市小町)が3月31日、駅前で続けていた営業を終了し閉店する。

記念スタンプには「明治35年~令和2年」の文字。35年以前の開店を想像するが、「事実確認ができる35年にこだわった」と小田切さん

 2月1日朝、人通りの多い店頭に貼り出された「閉店の知らせ」に気付き、足を止める人が相次いだ。「それでも、お得意さまなどには直前にお知らせしていたため、思ったよりざわつかなかったのでホッとした」と話すのは、同店4代目店主の小田切壽三(おだぎりじゅぞう)さん。「なるべく静かに終えようと思い、依頼のあったメディアの取材なども断った」と言う。

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 「経営的に考えれば、もっと早く決断すべきだったが、お客さまはもとより、従業員やご先祖さま、取引先のことを思うと、なかなか畳むことができなかった」と胸の内を明かす。「出版業界は上流で発行部数が減っているため、立地や店の努力ではもうどうにもならないところまで来ている」とも。

 それでも手をもこまねいていたわけではなかった。1976(昭和51)年に2階建て、面積約260平方メートル、従業員数17人、レジ3カ所という当時としては大規模な書店として新築オープンした同店。2000年前後から始まった出版不況を受けて、2009(平成21)年には建物の4分の3をテナントに貸すことで危機を乗り越えた。「あれをしなければ、ここまでの10年さえやってこられなかった」と振り返る。

 同店の創業は、若宮大路沿いに店舗を構えていた明治時代までさかのぼる。ただ、関東大震災時に焼け出されたため、店の歴史に関わる資料は全く残っておらず、創業当時のことは不明のままだった。

 小田切さんが同店で働き始めたのは1984(昭和59)年。ある日、年配の男性客が「これ、知ってるか」と古びた本を差し出した。表紙には「鎌倉大観」とあり、開くと色あせた写真が並ぶ鎌倉の観光ガイドブックだった。

 「お前の店で出したものだ」と言われページを開くと、奥付けには「明治35年」「発売元 松林堂書店」と記されていた。「出版していたのにも驚いたが、少なくともこの年には、すでに店があったことを証明する貴重な資料」でもあった。

 3代目と共に同書を近くの出版社「かまくら春秋社」に持ち込み、1986(昭和61)年に復刻版を発行した。書店として再び出版に関わることになったのも感慨深いという。

 小田切さんはその後、パソコン教室や通販、DPE、年賀状印刷など新規ビジネスも展開。毎年「夏です、漫画は2階です」のポスターを貼り出し、普段はギャラリーのスペースを漫画で埋め尽くしたことも。市内に住む上岡洋一郎さんは「小学生の頃、参考書を探しに行くのを口実に、いつも2階で漫画を読んでいた」と思い出を語る。

 閉店に際して記念品の配布も考えたというが、用意したのは感謝を伝えるスタンプ。ヒントは、たまたま古書店で見つけた鎌倉の写真を印刷したはがきだった。かつて同店が作っていたようで、「memory stamp of souvenir kamakura shorindo」の丸型のスタンプが押されていた。

 「何かの拍子にこのスタンプを見て、こんな書店がどこかにあったことを思い出すきっかけになれば。リクエストがあれば何にでも押すつもり」と笑う。店名のロゴや感謝の言葉に加え、確認された「明治35年」や「memory stamp of kamakura shorindo」の文字も刻印した。

 小田切さんは「苦労はあるが、店に立ち、人と会い、喜んだり反省したりする毎日は楽しかった。皆さんに感謝したい。閉店を知ったお客さまから店の来歴に関わる話も聞くことができ、新たな発見もあった」と話す。

 「最終日はセレモニーなど全く考えていない。とにかく静かに、いつもと同じように閉店作業をして消灯するつもり」と言う。同所は改装後、飲食店が入居する。

 営業時間は9時~19時30分(祝日は10時~19時)。日曜定休。

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