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民泊・カフェの収益で運営する鎌倉の子ども食堂 コロナ禍で継続も窮地に

「安全・安心で旬のもの。そんなごく当たり前の温かい食事を」とキッチンで瀬戸さん

「安全・安心で旬のもの。そんなごく当たり前の温かい食事を」とキッチンで瀬戸さん

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 鎌倉の民泊施設「Children’s cafe Bed and Breakfast Kimie(チルドレンズ カフェ ベッド アンド ブレックファースト きみへ」(鎌倉市二階堂4)がコロナ禍で経営が厳しい中、週1回の子ども食堂を継続するために努力を続けている。

宿泊客激減で一般客向けに始めた「焼き魚定食」(900円)

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 同施設を運営しているのは、東京都内の子ども家庭支援センターで子育て支援専門員として働いていた瀬戸貴美恵さん。「子ども食堂を運営するための資金づくりの手段として、民泊とカフェを始めた」と話す。「その民泊が今はストップしている状態なので、この先が全く見通せない状態」と窮地を訴える。

 瀬戸さんは精神保健福祉士や社会福祉士として、長年さまざまな子どものいる家庭と直接関わってきた。その中で、成長期の子どもたちがコンビニ弁当やファストフードばかりを食べていることに気付き、胸を痛めていたという。「ごく普通の温かいごはんを食べさせてあげたい」と思っていたところに「子ども食堂」の存在を知る。

 「いつか自分でもできないか」と調べたり、実際に手伝ったりしていくうちに、「寄付や助成金などに頼らなくても、継続的に運営できる仕組みが必要だ」と考え導き出したのが、同施設のスタイル。自分一人で動かしていくことができる規模の施設を探すことにした。

 縁もゆかりもない鎌倉を選んだのは、学生時代に初めて訪れた頃から「老後に住むのだったらこんな所」とぼんやり感じていて、母親が生前よく「海も山もある鎌倉が好き」と口にしていた言葉にも背中を押されたという。

 2018(平成30)年から物件を探し始め、鎌倉宮や杉本寺、報国寺、浄明寺などの名刹(めいさつ)にもほど近い金沢街道沿いの建物が売りに出ているのを見つける。「民家を改築した元シェアハウスで理想的だった。不動産店の担当者にオーナーへ掛け合ってもらい」、2019(令和元)年4月に賃貸での契約にこぎ着けた。

 シェアハウスから民泊に業態転換するためのトイレ・バスなど水回り中心のリフォーム費用、カフェや子ども食堂を開くための飲食店営業に必要なシンクやトイレ増設などの費用約350万円は、クラウドファンディングで募った。

 1階のダイニング8席のほか、テーブルやこたつを置いた和室、縁側とテラス席も用意。窓からは滑川(なめりがわ)の自然が見下ろせる。宿泊者共用の大型バスやトイレ、簡易キッチンも設置した。

 2階は客室で、シングル3、ダブル1、2段ベッドの部屋の5室。3カ月間でのリフォームを終えた7月、瀬戸さんは家族を川崎市の自宅に残して鎌倉に単身赴任し、施設をオープンさせた。

 まずは市内の団体が運営する子ども食堂の会場として月に1回使ってもらうところからスタート。民泊もB&B(朝食付き宿泊)として認知度が上がるに連れ予約が入るようになり、滑り出しは順調だった。

 「特に和食の朝ごはんは宿泊客の6割を占める外国人にも人気で、夜にも出してとリクエストがあったほど。予約の取れない宿になって、これで子ども食堂も本格的に運営できそう」と思っていた矢先に、コロナ禍がやってきた。

 宿泊予約はほとんどがキャンセルとなったが、持続化給付金や家賃補助などで何とか食いつないだ。「ただ、学校が休校で給食がなくなり、各地の子ども食堂も休止に追い込まれてしまった今こそ、子どもたちのために」と決意。苦しい中ではあったが、自主事業として毎週水曜17時から子ども食堂を開くことにした。

 2020年4月から再開すると、予想を上回る数の子どもたちが集まって来た。「近所の人が朝堀りのたけのこや家庭菜園で取れたホウレンソウを差し入れしてくれたり、カフェの常連さんが手伝いに来てくれたりしてにぎわった」と振り返る。その後も、プラネタリウムや朗読といった従来にない企画を持ち込む支援者が現れたり、毎回のように新たなボランティアが増えたりするなど現在も継続している。

 「とはいえ、まだまだ本当に必要としている子どもたちに届いているとは言い切れない。でも、とにかく頑張って続けていけば、そうした子どもたちもきっと足を運んでくれるはず」と瀬戸さん。「ただ単に食べ物を提供すればいい、おなかを満たせばいいわけではない。私は衣食同源という言葉が好き。安全・安心かつ季節の食材を使って作る、体に良くて温かい料理にはこだわりたい」と続ける。

 食材も近所の商店を中心に調達。朝食やカフェで食べた客に仕入れ先の店を紹介することも多いという。「宿泊客や子どもとその親はもちろん、地域の人や店、観光客など、世代や立場を超えた交流拠点や居場所になれば」と考えている。「かつての仕事でさまざまな子どもたちと付き合い、一時保護されるケースなども見てきた。そんな子どもたちのシェルターとしての役割も果たせれば」と将来を見据える。

 「GO TO トラベル」キャンペーンで昨夏から宿泊客が増え経営はいったん持ち直したが、2度目の緊急事態宣言で再びキャンセルが相次ぎ、2月の予約は今のところ1件だという。「2月、3月は何とか工面できそうだが、4月は危うい」と現状を話す。

 「一気に危機が改善できる妙案は浮かばない」というが、民泊はテレワーク用に個室を1時間1,000円で使用できるほか、ワーケーション用に連泊割引プラン(連泊10%オフ、1週間20%、2週間30%オフ、3週間40%オフ、1カ月半額)も用意した。

 近所の施設への弁当の配達のほか、宿泊客がいないため「朝ごはん」の一般客への提供も始めた。「朝ごはんやカフェ利用だけでもありがたい。その1食、1食が子ども食堂につながっていくので」と来店を呼び掛ける。

 「朝ごはん」は、焼き魚定食(900円)をメインに納豆、地鶏卵、焼きのり(各100円)、オーガニックコーヒー(400円)。「ランチタイム」は、オムライス(800円)、キーマカレー、ツナサンド、焼き魚定食(900円)、オーガニックコーヒー(400円)、手作りケーキセット、和菓子と抹茶セット(600円)など。

 カフェ営業時間は、朝ごはんが7時30分~10時、ランチタイムが12時~15時。日曜・月曜・火曜定休。

 民泊の宿泊料金は、1泊朝食付きで5.800円~1万800円(土曜、日曜、祝日前は1,000円増し)。チェックイン15時~21時、チェックアウト10時。

 子ども食堂は、毎週水曜17時~19時。料金は、子ども100円(未就学児は無料)、大人500円。

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