子ども連れの母親らが、毎週土曜10時から鎌倉市内の公園を巡りながらゴミを拾う「鎌倉パーククリーンアップ!」を始めた。
「各地のゴミ拾いやビーチクリーンに参加してきたが、子ども連れにとっては時間が早かったり、車道が危険だったりして、継続的に参加するのが難しかった」と話すのは、発案者で長谷在住の藤本あさこさん。「もっと気軽に、もっと安心してゴミ拾いができないかと考えたのがきっかけ」と続ける。
「以前、公園で遊んでいた幼児がキラキラするものを見つけてきたらゴミで、親がひやっとしたという話を思い出し、公園に的を絞ってやってみようと思いついた」と言う。囲いがあり遊具もあるため、いつものように子どもと公園に遊びに行く感覚で、安心して楽しくゴミ拾いができると考えた。
調べてみると、市内には行政が整備した大規模な公園からマンション付帯の小さな公園まで200カ所以上あることが分かった。市役所や公園協会などにも相談し、収集したゴミの処分の方法までレクチャーを受けた。
「鎌倉にある全ての公園をきれいにしていこう」とママ友に声を掛けて昨年12月26日に第1回を開いた。SNSで呼び掛けると、5組の子連れや夫婦が集まった。軍手やトングを用意していたが、持参する人もいて驚いたという。「子どもと一緒に宝物を探すつもりで歩くと、大人の目線では見つけられないようなゴミもあり、楽しめた」と振り返る。
2回目の「鎌倉海浜公園坂ノ下地区」では、ランニング中だった人も加わってくれた。江の島越しに富士山が見える撮影スポットとしても知られる「稲村ヶ崎公園」では、地元サッカークラブのスタッフ5人も参加してくれた。「子ども同士でゴミの取り合いになったり、植え込みの中で届かない場所のゴミをどうやって取ったらいいかをみんなで考えたり」するなど、毎回楽しみながら続けた。
4回目は、藤本さんにとってほとんど縁のなかった大船地区へ。地元在住の参加者に案内してもらい、岩瀬近辺の公園をはしごした。「公園を目指して歩くことで、そのエリアを知ることができたり、新しい知り合いができたりして楽しい」ことを実感した。
5回目は、若宮大路の一の鳥居近くの「若宮大路公園」に集合。集まった大人9人と子ども4人が手指の消毒後、ソーシャルディスタンスを保ちながら公園内を歩き回りトングでゴミを拾い集めた。
30分後に徒歩で近くの「由比ガ浜とびうお公園」に移動。マンション付帯の小さな公園で、あらかじめ管理者に声掛けもしたという。ロッキング遊具を見つけ遊ぶ幼児たちを笑顔で見守りながら、隅から隅までゴミを拾った。
この日の3カ所目は「由比ガ浜あわび公園」。路地を奥に3分ほど進むと住宅街の一角に公園が現れ、「こんなところに」「懐かしい遊具もある」と歓声が上がる。ほとんどの参加者が初めて訪れる場所だった。周囲の民家に見守られているためかゴミは少なかった。
「場所によって人気があったりなかったり、ゴミが多かったり少なかったりして面白い。暗い感じの所はゴミも多く、タバコの吸い殻もあって驚くことも」と話すのは、初回から参加している柴田なるみさん(長谷在住)。「地図で見ると市内にはたくさんの公園があるが、実際に行ってみないとどんな雰囲気なのかも分からないので、このクリーンアップで訪ねて回るのが楽しみ」とほほ笑む。
星蔵貴さん(小町在住)は「昨夜、SNSで知って子ども2人と初めて参加した。ずっと鎌倉に住んでいるが、こんなに公園があることを知らなかった。子どもも喜んでいて良い体験になった」と話す。
東京都北区から親子で参加した桑原あやこさんは「藤本さんとは母親たちのコミュニティーで知り合い、楽しそうなことをしていると思って今朝は早起きして来た。観光スポット以外の鎌倉を歩くのは初めて。鎌倉の知らない場所を歩いて、しかもそれが公園のゴミ拾いだというのが面白い」と笑顔を見せる。
いったん解散したが、この日は暖かく天気がよかったこともあり、参加者の多くが「鎌倉海浜公園由比ガ浜地区」へ向かい、広大なスペースで海風を受けて遊びながらゴミも拾った。
藤本さんは「小さな子どもでも、公園でゴミを拾ったという記憶が、やがて環境意識に結び付いていくはず。コロナ禍をきっかけに鎌倉に移住してくる家族も多いが、地域のコミュニティーに入るきっかけにもなる。もちろん子ども連れでなくても、夫婦でも、独身でも大歓迎。毎週やる予定だが、都合のいいときだけでいいので気軽に参加を」と呼び掛ける。
「まだ始まったばかりだが、同様な動きが鎌倉以外にも広がっていったらうれしい。音声配信SNSを使って、複数の公園で同時にゴミ拾いをする『リモートクリーンアップ』にも挑戦したい」と声を弾ませた。