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「シュミーズ」って何? 鎌倉の花屋で「抱きしめたいほどかわいい下着」展

会場の「パインヴィラージュ」で、初めてデザインしたシュミーズを手にする倉本さん

会場の「パインヴィラージュ」で、初めてデザインしたシュミーズを手にする倉本さん

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 鎌倉のフラワーショップ「パインヴィラージュ」(鎌倉市御成町4)で5月3日から、オリジナルの女性向けインナーウエアの「抱きしめたいほどかわいい下着」展が開かれる。

3本のボーダー刺しゅうのキャミソール着用例

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 主催するのは、シュミーズやキャミソール、ホルターネックなどをデザインし、オーガニックコットンで少量生産し販売しているインナーウエアの「CUURA(クーラ)」。

 ブランドを立ち上げたきっかけについて、代表の倉本あさえさんは「25歳の頃、フランス・パリの『蚤(のみ)の市』で、かわいくて手に取ったのがシュミーズだった。丁寧な刺しゅうが施され、ギャザーが細かく入った古い下着で、いつかは自分でも作ってみたいと思った」と話す。「実は、シュミーズという言葉は何となく聞いたことがあった程度。肌着であること以外よく分からなかった」と続ける。

 シュミーズとは、中世以降の西欧で生まれたワンピースのような形状の女性用下着。日本でも戦後から「シミーズ」とも呼ばれ普及していたが、生活様式の変化や流行によって次第に姿を消していった。現在は百貨店などで高価なものを中心に扱われるのみだという。

 倉本さんは、その後もアルバイトをして資金を貯めては欧州各国に出掛け、マーケットやセカンドショップなどを巡り、アンティークやビンテージともいわれる下着類を買い集めた。「特に手仕事とは思えないほど精巧な刺しゅうに目を奪われることも多く、着てみると心が躍った」と言う。いよいよ「作りたい意欲が高まった」2019(令和1)年春、本格的に動き出す。

 まず、「刺しゅうは本場にお願いしよう」と、群馬県桐生市の刺しゅう工場に一件一件アプローチした。「ただ、実績もない上に発注量が少ないこともあり、どこも相手にしてくれなかった」と振り返る。ようやく家族経営の工場が話を聞いてくれることになり、先方の出張のタイミングで東京で落ち合った。

 熱い思いを伝えると受けてもらえることになったが、倉本さんが思い描くデザインとは趣が異なる刺しゅうがメインの工場だったため、先方にとっても挑戦だったという。倉本さんは女子美術大ファッション科卒とはいえ、刺しゅうに関しては全くの素人だったため「とにかく聞きながら、教えてもらいながら」で、「刺しゅうに厚みを出すために耐えられる生地選び、理想の色を出すための糸選び」など、何度も桐生に足を運んで、一緒に試作を繰り返した。

 倉本さんにとって、シュミーズ自体や刺しゅう部分のデザインは楽しい作業。「でも、生地を探すのも、染色してもらう先を探すのも初めて」だった。パタンナーに外注すれば1週間もあれば上がってくる作業も、節約のため1カ月近く掛けて自ら手掛けた。「時間は掛かったが何とかできたのは、母親の服は全て作っていたという祖母のDNAのおかげかも」と笑う。

 生地は、吸湿性も通気性もよく肌に優しいオーガニックコットンを使い、肌に負担がないように全て袋縫いで仕上げた。「ヨーロッパで手にしたシュミーズはサテンやシルク製で、胸の下で切り替えがあり、ボタンの代わりにリボンを使っていた。自分が作っているものは、そんな枠からどんどん飛び出していき悩んだこともあった」と言うが、「鎌倉で作って鎌倉で売るのだから、自然で優しいシュミーズでいいのでは」と切り替え製作を進めた。

 出来上がったシュミーズは、ゆったりしたラインでリラックスして着ることができるものに。「下着ではあるけれど、上に羽織ってもおしゃれなはず」と試してみると、違和感はなかった。「シュミーズという言葉は使うが、自由に着こなせる服」になった。

 「作るだけ作ったものの、実は販売する店の当てもなかった」と倉本さん。「でも、置く場所は何となく下着屋さんや洋服屋さんではない」と思っていたという。そして、「花の刺しゅう」や「自然素材」から思い浮かんだのが生花店だった。早速、知り合いのフラワーショップ「パインヴィラージュ」に相談。同店は江ノ電が鎌倉駅を出て2つ目の踏切の脇にあり、ウッドデッキが緑に覆われ、いつも風が吹き抜けていた。

 持参したシュミーズを見た店主は「かわいい」と興味を持ち、展示を快諾してくれた。実際に緑の中に飾ってみると、風に揺れ「花が咲いているイメージ」で、想像以上になじんで見えたという。

 早速、同所で何度か展示販売をしてみると、初めは知り合いが買ってくれていただけだったが、次第に通り掛かりに目にした人が買ってくれるようになった。「以前購入してくださった方が、上に着て来店してくれる姿を見てうれしかった」と目を細める。自由な着こなしを実践してくれていた。

 今回展示するのは、シュミーズ(1万3,200円)はユリやネモフィラ、スカラップ柄などの刺しゅうの入った6種。キャミソール(1万1,000円)も同様の6種、ホルターネック/通称キンタロー(8,800円)は3種。ほかにオーガニックコットンマスク(1,320円)も用意する。

 倉本さんは「たぶんシュミーズでは鎌倉初のブランド。見た目もかわいいが、下に着ているだけでも心が躍り、豊かになり、ハッピーになれるはず。ご近所にお出掛け用の1マイルウエアとして、湘南っぽいリゾートウエアとしてもお薦め。緑あふれる空間で、まずは見たり触れたりしてほしい」と話し、「こんな時期なので、遠方の方はオンラインショップでも」と呼び掛ける。今後も商品がフィットする店舗や会場を探して展示販売していくという。

 4月29日~5月2日は三条屋大谷商店(雪の下3)でのイベント「アート&クラフト」にも出店。13時~17時。

 「抱きしめたいほどかわいい下着」展の開催時間は10時~18時。入場無料。5日まで。

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