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鎌倉腰越の寺院巡り限定「ご朱印帳」 世代超え仲間で手作り

発案者の中嶋さん(左)、デザインした小野さん(中)、かおかおパンダさん(右)が腰越御朱印帳を手に

発案者の中嶋さん(左)、デザインした小野さん(中)、かおかおパンダさん(右)が腰越御朱印帳を手に

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 鎌倉の腰越エリアにある寺院を巡り、朱印を集めるための「腰越御朱印帳」が5月4日から、地元の店舗などで販売される。

ご朱印帳は、手引き、水引、しおり、「御朱印帳」と「御首題帳」の題字のセット

 鎌倉市の西端に位置する腰越。隣接する藤沢市の龍口寺は、住職が不在だった1886年(明治19)年まで周辺の8つの寺が輪番で霊場を守っていた。そんな歴史的背景もあり、腰越は寺院が多いことでも知られている。

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 「地元の人も、近所にお寺がたくさんあることは知っているが、檀家(だんか)さん以外はお寺を訪れる機会がない」と話すのは、中嶋寿子さん。2016(平成28)年に東京から転居して来て以来、腰越が大好きになり、「腰越ぶらり街歩きマップ」を自費で制作するなど地域を盛り上げる活動を続けている。

 「マップは店舗の紹介がメインなので『載っていたお店に行ったよ』などと声を掛けてもらうことが多いが、店舗以外のスポットにも足を運んでもらう方法はないかと考えていた」と言う。地図を広げ改めて見てみると、目立ったのは寺院。「調べてみると2丁目だけで7つ、5丁目に2つもあった。実は、龍口寺の輪番8カ寺のうちの6つが腰越にあった」と驚く。

 ご朱印帳を手に鎌倉駅周辺の寺を巡っている人たちを見掛けたのを思い出し、腰越の寺院限定のご朱印帳作りを思いついた。「まずは地元の人にもっと地元を知ってもらい、地元以外の人や観光客には、腰越に足を運んでもらうきっかになるはず」と動き出した。

 ご朱印帳について全く知識がなかったため、インターネットや書籍で調べるところからスタート。一から手作りでは費用が掛かり過ぎてしまい悩んでいたところ、和紙を蛇腹(ジャバラ)状にとじたキットが販売されていることが分かり仕入れることに。「それ以外は、全て腰越に暮らす人だけの手で作りしたい」と考え、製作を手伝ってくれた人には「きちんと対価を支払う」ことも決めた。「利益が出たら、今夏も予定している『腰越浜のおもちゃ花火大会』など地域のために全て使う」ことにした。

 表紙と裏表紙は「どこにでもあるご朱印帳ではなく、腰越らしいデザインに。2種類作って選べるようにしたい」と昨年末、腰越在住のデザイナー2人に依頼した。

 オファーを受けたのは、オリジナルデザインのアパレルやグッズ、天然石などのアクセサリーを製作販売する「ONE KAMAKURA」の小野修平さんと画家として活躍するかおかおパンダさん。小野さんは「自分でデザインして自分で売るのが仕事だが、依頼を受けてデザインするのは初めてで少し戸惑った」と驚きを隠せない。一方で、かおかおパンダさんは「ご朱印集めをしている母親に喜んでもらえる」と快諾した。

 実は、かおかおパンダさんは小野さんの店に毎日のように顔を出す常連で、これまでに4年連続でコラボ展を開いている仲だった。中嶋さんが持参したイメージ画を見ながら2人で話しているうちに、表紙と裏表紙を別々に描き、開いた際に一枚の絵に見えるアイデアが出た。「もともと彼女のファンが多いので、2種類売り出せば販売数に差が出るのが明らかで怖かったから、胸をなで下ろした」と小野さんは笑う。

 昨年12月から本格的に打ち合わせを始め、今年1月末に完成した。左側の表紙はかおかおパンダさんが笑顔の太陽を大胆に配し、右側の裏表紙は、光を受ける富士山や江ノ島、子動(こゆるぎ)岬など腰越からの風景を小野さんが描いた。左右を、江ノ電や虹、波などが結んでいる。「虹は、腰越沖がオリンピックのセーリング競技の舞台になっていることをイメージした」と口をそろえる。

 できあがった作品を手にした中嶋さんも「予想を超えていた。コラボしてもらうことでシンプルになったと同時に、特別感が増して貴重な一冊になった」とほほ笑む。

 表紙・裏表紙の制作中、中嶋さんはかおかおパンダさんのポストカードを仮の表紙にした試作品を手に、寺院を一件一件回っていた。従来のご朱印帳と異なるテイストに「見て驚くご住職が多かったものの、どこも好意的」で「ほかのお寺さんを紹介してくださるケースもあった」と言う。

 ご朱印帳に挟み込む案内は、ご朱印の由来や参拝時の作法、ご朱印をお願いする際のマナーなどを。反対の面には、寺院の紹介を掲載した。「半日もあれば全て巡ることができるが、観光客向けの寺ではないので不在の場合もある。それでも、ぶらりと境内を見たり、参拝したりしてほしい」と話す。

 表紙と裏表紙の印刷は地元の松井印刷(津西)に依頼。耐久性を高めるため予算をオーバーしてしまったが、好意で縦の帯を提供してくれた。横に渡すベルトにも、地元の作家がアクセントにと水引きを付けてくれた。「地元の皆さんの思いが集まって、どんどんすてきなものになっていく」ことを実感する毎日だった。

 作業は4月8日から始まった。古民家レンタルスペース「FOLK Koshigoe」では、年配者たちが初めての作業にも楽しく手を動かした。翌日は、母親世代がカフェ「腰越珈琲」に集まり、地元の話題で盛り上がりながら2時間を過ごした。同店では人数分のドリンクの注文だけで和室を提供してくれた。その後も「話を聞いて手伝いたいと手を挙げてくれる人が増え」作業は進んだ。

 最初こそ集まってくれたメンバーに中嶋さんが作り方を指導していたが、次第に覚えた人が初めての人に教えるようになった。「苦手な部分を相互に助け合うなど、世代を超えたコミュニケーションが生まれ、そんな様子を見ているだけでうれしくなった」と振り返る。

 4月20日には80冊が完成。発売日までに100冊を用意する。その発売日の5月4日と5日は「『こしごえ』の語呂合わせ」と笑う中嶋さん。2日間の販売数を見ながら、さらに50冊を作り、最大200冊まで増やす準備もしている。かおかおパンダさんはサーフィンをしていた海の上で「知り合いから1冊ほしいと言われ、すでに話題になっている」ことを感じたという。

 販売する店舗は「れんたるすぺぇす つちや」「ONE KAMAKURA」「カフェ イヌゾ」など腰越駅周辺のみに限定。中嶋さんは「腰越に来ていただきたいので、通販するつもりはない」ときっぱり。

 かおかおパンダさんは「サーフィンがしたくて19年前に引っ越してきた腰越は、最近どんどん魅力が増してきている。一人の思いから地元だけのご朱印帳もできたし」と話し、小野さんも「これをきっかけに腰越に行ってみたいと思い、実際に使って巡り、腰越がどんな街なのか実感してもらえたらうれしい」と続ける。

 中嶋さんは「腰越愛が詰まった1冊が腰越の人たちの手で、今日も次々に出来上がっている。ぜひ手に入れて、お寺や歴史も知って、腰越の街をたっぷり楽しんでいただければ」と呼び掛ける。

 5月7日~12日まで「水平線ギャラリー」(御成町5)で、小野さん夫妻とかおかおパンダさんによるコラボ展「WAKUWAKU vol.5」が開かれ、ご朱印帳や原画なども展示する予定。

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