NPO法人「日本エコロジーアップサイクル協会」(鎌倉市由比ヶ浜)が8月4日、鎌倉市内の飲食店などに無償提供している手作り「マスク入れ」の配布数が2000個を超えた。
「鳩サブレー」の豊島屋の紙袋からアップサイクルしたマスク入れ
使わなくなった紙袋や包装紙などを新たな雑貨小物などに再生する活動に取り組んでいる同NPOでは昨年9月27日から、ワークショップを開いて手作りした「マスク入れ」を鎌倉市内の飲食店などに無償提供している。
マスク入れの大きさは縦12センチ、横20センチ。真ん中を開いてマスクを出し入れする。買い物の際に店舗で受け取る紙袋を解体して26センチ四方にカットし、折ったり切り込みを入れたりしながら両面テープで貼り付けた。同NPOでは、スタッフやボランティアなどの協力で製作したマスク入れをこれまで市内の飲食店など6店に配布してきた。
この日は同NPO理事長の木村俊平さんが「朝食屋COBACABA(コバカバ)」(小町)を訪問。店主の内堀啓介さんにマスク入れ20個を手渡し、地元店への配布総数が2005個になった。
木村さんは「内堀さんから、入店したお客さまが外したマスクの置き場に戸惑っているという話を聞いたのがきっかけでマスク入れを手作りし配布を始めた。1年足らずで2000個を超えるとは驚き」と話す。内堀さんは「お客さまに使ってもらうことで新型コロナ感染拡大防止に貢献できているのがうれしい。ゴミをなくす、リユース、アップサイクルの意識が地域でさらに盛り上がっていけば」と期待を寄せる。
木村さんによると同NPOが製作してきたこれまでの製品に比べ、マスク入れは製作工程がシンプルなため短時間で作ることができることから、たくさん作って飲食店に提供しようと動き出したという。
「まずは朝食屋 COBACABAに専用ボックスを設置し、作った20個を置くとすぐに無くなってしまった」と振り返る。内堀さんは「紙袋のデザインが生かされているので、特に観光客に人気。実用的なのはもちろん、きれい、かわいいと持ち帰る方が多かった」と話す。
「配布を始めた一方、供給が追いつかなくなったことから、ワークショップ『鎌倉みんなでアップサイクルマスク入れ製作配布』を開き一般の人にもボランティアで作ってもらった。これまで70回近く開き、参加者数は延べ150人になった。ほとんどが女性で、年代は中学生から年配者までと幅広い。製作に掛かる時間は、初心者で1個当たり15分~20分。慣れてくると1回で10個程度作ってしまう人もいる」と木村さん。
ワークショップ参加者たちからは「誰かの役に立ちたかったから」「少しでもゴミを減らことに貢献したかったから」「紙袋が別の物に生まれ変わっていくのが楽しい」「デザインを生かす工夫を自分なりにできるところが面白い」などの声があったという。
木村さんは「楽しみながら作ってくれるのはありがたいが、参加者に何か恩返しができないかと考えていたところ出合ったのが鎌倉で誕生したばかりの地域通貨『まちのコイン』。金銭への置き換えができないものの、事業者と利用者間で『あげる』『もらう』ことでつながりが生まれる仕組みのスマホアプリだった」と続ける。
同NPOでは「まちのコイン」に加盟し、参加者にアプリ登録を呼び掛け、マスク入れ2個で200クルッポ(コインの単位)、紙袋提供者には300クルッポを進呈するなどまちのコインを活用した。
「一方で完成品の配布先である店にも同アプリを導入してもらい、数に応じてクルッポを受け取ることで気持ちよく納品できるようになった」と木村さん。今では、宿泊施設「We Base 鎌倉」(由比ヶ浜)、「佐助カフェ」(佐助)、「鎌倉六弥太」(御成町)、「癒し処にじょっく」(由比ヶ浜)、「薫太」(材木座)などマスク入れの設置店も増え、マスク入れ一個一個に各店と同NPOのQRコードをプリントしたシールを貼付しているという。
木村さんは「現在、メディアの取材や一般企業からワークショップを開いてほしいという依頼も増え、少しずつ認知度が上がってきていることを実感している。ただ、『うちにも置いてほしい』と他店から声を掛けられるようになったのに、供給が追いつかないことが課題だ」と話す。
「その後、夏休みに入った高校生たちがワークショップに参加してくれて、これから量産できると喜んだタイミングで緊急事態宣言が出された。集まってのマスク入れ作りは休止せざるをえなくなってしまい、オンライン開催に切り替えたが、完成品の受け渡しなど課題もあり、全体に供給のスピードは落ちている」とも。
「はさみ、カッター、両面テープ、カッティングボードさえあれば誰でも始められる。それでいてSDGsにも、コロナ禍の生活にも貢献できる」と木村さん。「以前は物の完成がゴールだったが、マスク入れはそれを使ったり持ち帰ったりするという次のアクションにつながるツールでもある。実際に受け取った人がワークショップに参加してくれたケースもある。今後も自分でも作ってみたいという人が増えて、各地で同様の流れができていけばうれしい」と話す。
同NPO主催のワークショップのスケジュールは今後、ホームページで告知していくという。