中学生を対象に鎌倉在住の映画監督・山崎達璽さんが映像制作を指導したドキュメンタリー作品などが完成し11月24日・25日、発表会を開いた。
山崎さんは1974(昭和49)年生まれ。映画監督として活動する傍ら20年以上にわたって映像専門学校の講師を務め、今年3月に出版した電子書籍では、教育現場へのタブレット導入を見据え、映像制作を取り入れた授業を学校現場に向けて提案した。
山崎さんは「子どもたちの日常の娯楽として定着している動画を、学習ツールとして活用。映像制作を通して、協働作業、他者への興味、実社会とのつながり、メディアリテラシー、学び続ける姿勢など、これからを生き抜く力を身に付けるてもらうのが目的」と話す。全国の学校から問い合わせがあり、都内の中学校や高校が山崎さんの指導で授業を始めているという。
活動がメディアで取り上げられたことをきっかけに、鎌倉市教育委員会の岩岡寛人教育長が山崎さんに依頼。北鎌倉女子学園中学校(鎌倉市山ノ内)と鎌倉市立玉縄中学校(同市岡本)での授業が実現した。
授業では、山崎さんが作成したカリキュラムを各校向けにカスタマイズ。山崎さんは「教育方針や生徒の特性、期間なども異なり不安はあったが、両校とも教員が協力的でモチベーションが上がった」と話す。
北鎌倉女子学園中では、2年生21人がタブレットを使い、週2回ある「先進的な学びの時間」で3カ月をかけてドキュメンタリーを制作。「鎌倉とコロナ禍」をテーマに、市内の寺院や神社、教会を訪ねてインタビューを行い、それぞれの宗教がコロナ禍とどう向き合っているかを生徒の目線で取材した。
生徒らは「インタビューするまでにも、いろいろな作業があった」「班のみんなで協力したり分担したりして楽しくできた」「5分の動画1本を作るのにたくさんの貴重な体験ができた」「3カ月かけて完成した時は達成感があった」「将来につながる経験ができた」などの感想を寄せた。
11月24日に行われた校内での発表会では、5分の作品を7グループが上映。機材提供した「TES-AMM JAPAN」の田中聡子さんは「それぞれ撮り方、テロップの入れ方、音楽などカラーが出て面白く、何より中2とは思えない完成度の高さに驚いた」と話す。山崎さんも「客観的な視点を持ったドキュメンタリー作品に仕上がっており、よくあるユーチューブ動画の模倣になっていなかったことにも感動した」と話した。
玉縄中では、1年生189人を対象に11月25日、ワークショップを行い「時候のあいさつ」をテーマに30秒の映像を生徒と共に制作した。映像は、同校が総合の授業で1年間かけて取り組む課題解決型学習の成果発表時に活用する。
生徒らは「文字も使わなければ思いは伝えられないと思っていたが、映像だけでも伝わることが分かった」「映像に音楽や効果音を入れるだけで印象が変わった。音の重要さを知った」「1人で作業した方が円滑に進むと思っていたが、複数で作業したことで自分にはない考えが出てユニークな作品ができた」と話した。
「生徒たちにとっては分からないことだらけで大変だったと思う。テレビで見るインタビューでも、その裏に大変な苦労があることが学べたのではないか」と話すのは、北鎌倉女子学園中の広井修教頭。「非言語による思考や表現活動の重要さを感じていたところだった」と話す玉縄中の小林大介教諭は「授業を通じて映像表現が持つ面白さや奥深さを実感できたはず」と喜ぶ。
「動画に親しんでいる世代にしっかり映像を制作してもらうことを、映画を見る目の育成につなげるのも映画に携わる者としての役割。若者に少しでも関心を持ってもらえれば」と山崎さん。「活動を全国に広げていきたい」と意気込む。