泣くことでストレス解消を体験してもらう「涙活(るいかつ)」ワークショップが7月9日、鎌倉の会員制図書室「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町)で開かれ、参加者の多くが涙を流した。
「これまで5万人を泣かせてきた」と話す「なみだ先生」こと吉田英史さん
ワークショップを開いたのは「なみだ先生」を名乗る吉田英史さん。高校教師だった頃、相談に来る生徒の中で泣き出す生徒ほど早く立ち直っていったことから、涙の効用に着目。脳生理学者で東邦大学医学部の有田秀穂名誉教授から医学的な裏付けを得て、能動的に涙を流すことでストレス解消を目指す「涙活」を2013(平成25)年にスタートさせた。
日本では泣くことは恥ずかしいなどと教えられてきたことから、涙を流す機会が少ない傾向にあり、ストレスにもつながっていると考える吉田さんは「もっと泣いてもいい。できれば週に1回、積極的に涙を流せば心のデトックスにもなる」と話す。企業、学校、医療施設、介護施設、自治体などからの依頼で講演や体験会を開く傍らテレビなどメディアからの出演依頼にも応じるうちに、吉田さんの肩書きは「なみだ先生」になったという。
出身地でもある鎌倉で、歴史的なスポットを巡り悲しいエピソードなどを聞いて泣く「涙活ツアー」を行ってきた吉田さんがワークショップを開くのは今回が初めて。同施設に通う友人らのリクエストに応える形で「泣くの日」に当たる7月9日に合わせて開いたという。
当日は、吉田さんが涙活についてレクチャーした後、家族や夫婦、動物にまつわる涙を誘う映像を7本続けて上映した。映像は1本当たり2、3分で、常に150本を用意しているという。吉田さんは「泣けるつぼは人それぞれなので、何に心が揺さぶられるのかを映像で体験してもらった」と話す。
上映の後、「○○さんへの感謝の手紙」を書くワークへ移った。「誰に書くかをすぐに決めて8分で書いてください」という吉田さんの呼びかけに、参加者からは「短すぎる」と声が漏れた。
書き終えると、参加者が順番に、両親や配偶者、祖父母、亡くなった有名人などに宛てた手紙を読み上げた。聞きながら涙ぐむ人や、中には読みながら泣き出す人もいて、施設内には鼻をすする音が響いた。
8分で書いてもらう理由について、吉田さんは「誰に宛てるのかを瞬時に決めるところに意味がある。思い浮かんだ人こそが泣けるつぼで、さらに限られた時間の中で作文することで、その人への思いがよりシンプルに浮かび上がってくる」と説明していた。
参加者は「自分の泣きポイントが分かった」「映像では泣けなかったが、祖母への手紙を書いているうちに、伝えていなかった思いに気付きぐっときてしまった」「自分は泣ける体質だということに初めて気付いた」「皆さんのリアルなドラマを聞いているだけで泣きっぱなしだった」と感想を話し合った。「マスクの中はグショグショ」と話す人もいて笑いを誘った。
「涙を流した皆さんが、スッキリした表情で帰ってくれほっとした。『今日泣いて、明日笑顔になろう』が涙活のコンセプト。明日からはもっと笑顔になっているはず」と吉田さん。「泣くこと、涙は世界共通。歴史的にも泣ける話や場所が多い鎌倉から、涙活を世界へ広げていきたい」と意気込む。