見る・遊ぶ 買う 学ぶ・知る

古典技法を用いて描く現代アートと古美術のコラボ展 鎌倉のギャラリーで

キャンバスに混合技法で描いた作品「十六夜」

キャンバスに混合技法で描いた作品「十六夜」

  • 21

  •  

 現代美術と古美術のコラボ展「宮崎智晴『屈折率』×古美術~ヨーロッパ古典絵画の輝きを未来へつなぐ~ 」が7月6日から、鎌倉の古美術ギャラリー「Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム オスティウム) 」(鎌倉市浄明寺)で開かれる。

宮崎さんの「十六夜」に合わせて展示する古美術の「海獣葡萄鏡」

[広告]

 2021年に店主の黒田幸代さんが鎌倉郊外の丘の上に開いた同ギャラリー。世界各地から集めた古美術品を展示販売しているが、もともと好きで集めていたという現代アート作品も「現代を生きる作家の作品も古美術と同じ時間軸上に存在する」(黒田さん)と一緒に展示するようになった。今回は、ヨーロッパの古典絵画技法を引き継ぎ、オリジナルの様式美を探求する宮崎さんの作品を約20点展示する。

 黒田さんが宮崎さんの作品を初めて見たのはインスタグラムだった。「さまざまな色の糸が何層にも重なった織物のような質感で、初期ルネサンス絵画を思わせ引かれた」と黒田さん。関西を拠点に活動している宮崎さんの個展がたまたま都内で開かれることを知り、自分の目で直接見てみたいと駆けつけた。

 黒田さんは「実物を見て改めて感動し、その場でコラボをお願いしてしまった。初対面でプロポーズした感じ」と笑う。突然のオファーを受けた宮崎さんは、個展を終えて関西に帰る前に同ギャラリーを訪れた。迎えた黒田さんは「作品を持参し、実際に置いてみては『いいですね』と言ってくださり、私はかなりはしゃいだ」と振り返る。その場でコラボ展が決まった。

 宮崎さんが用いている混合技法は、和紙や板、キャンパスなどに、卵で練ったテンペラ絵の具の層と油脂油絵の具を薄く溶いたニスの層を細い筆で交互に重ねていく技法。宮崎さんは「何点か同時に制作することが多いため正確には言えないが、3、4日で仕上がるものもあれば、少しずつ手を入れて数年後に完結することもある。職人に近い作業かも」と話す。今回出品する「月下美人」は「月に化石があるのかどうか分からないが、あるとすればこうした質感だろうと勝手に想像しながら描いて4年かかった」と続ける。

 黒田さんは「今回の展示は、過去の遺物である古美術と過去の芸術手法に光を当て現代に引き寄せる宮崎さんの作品を一緒に展示し、屈折率によって変化した多様な光が未来につながっていくイメージ。過去から未来へ横断するという道筋に身を置いて身体面を含めて働く作用を体感してほしい」と話す。

 宮崎さんの作品「十六夜(いざよい)」には唐時代の古美術「海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)」を合わせるなど、宮崎さんの作品1点につき、同ギャラリーが所蔵する古美術1点を組み合わせて展示する。絵画のサイズは、左右32ミリ×天地42ミリの切手サイズの小さなものから、最大で左右910ミリ×天地727ミリ(30号)程度で、ほかにも絵付けした京扇子なども展示販売する。

 宮崎さんは「芸術家が交流し互いに高め合う鎌倉の風土にあこがれを抱いたことがある。今回の個展を通して、文化芸術を愛する多くの鎌倉の人と交流できれば」と話し、黒田さんは「ギャラリーの建築空間効果も併せて、作家自身が作品を選抜し展示する意欲的な展覧会。スピードが求められる現代に、人の手の息づかいが感じられる深淵(しんえん)美の世界を体験してほしい」と来場を呼びかける。

 7月6日14時~16時にオープニングイベントとして茶話会を開くほか、8日・9日・18日の14時~16時にギャラリートークを開く。

 営業時間は11時~17時。水曜定休。7月18日まで。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース