鎌倉の住宅街の自宅玄関アプローチを店舗にした生花店「ROJI (ロジ)」(鎌倉市二階堂)が10月8日で3周年を迎えた。
鎌倉駅東口から徒歩20分の閑静な住宅地にある同店。鎌倉宮に続く道路沿いの民家の門に、店名が書かれた鉄製の看板がかかっている。奥に伸びる幅2メートル、奥行き12メートルのアプローチには色鮮やかな切り花や鉢苗などを並べ、店主の山中あすかさんが客を迎える。
山中さんは「3周年を知って来店してくれた常連の顔を見て、一人一人の好みが少しずつ分かってきたと改めて感じている」と話し、当日は記念品として用意したオーストリアの焼き菓子を花に添えて手渡した。
山中さんが花を仕事にしようと考えたのは英国在住時の2003(平成15)年。常に生活と共にある花や植物の存在に引かれて、ロンドンのフラワースクールで学んだ。働いていた大使館を辞め、同スクールが運営するショップでも働き始める。2年後にはフリーランスのフローリストとして活動を始め、2010(平成22)年からフラワーレッスン講師としても活躍。鎌倉に転居した2014(平成26)年以降は、自宅でフラワーレッスンを行う傍ら、店を持つという夢を実現するため、都内や茅ヶ崎のフラワーショップでも働いた。
「一人で切り盛りできる自信は付いたが、店舗を借りて開くのはハードルが高く、ずっとモヤモヤしていた」という山中さん。「ある日、道路から自宅の奥を眺めていた夫がつぶやいた『ここに花を並べて売ってもいいのでは』の一言で、全てが動き出した」と続ける。ユニークなアイデアで夢が現実になった。
建物の中ではなくオープンな空間だからこそ花との出合いや人との交流もしやすいと考え、コンセプトは「鎌倉の路地からつながる花と人」に。店名を「路地」にして2021年10月にオープンした。
駅から離れているため人通りは多くないが、民家の入り口が色とりどりの切り花や鉢苗などが並ぶ明るい路地になったことで、多くの人が足を止めた。近所に住む人だけでなく、インスタグラムの投稿を見てわざわざ遠方から足を運ぶ客もいるという。
山中さんは「1年目は定期的に自宅用に購入する方が増え、2年目は花束やアレンジメントなどギフト需要も目立ってきた」と振り返る。変化に応じて、入り口にリヤカーを置いたり、棚や木箱を増設したり、照明を設置したりしてきた。今後は、客が休憩できるようなスペースを設けたいという。
切り花1本から販売し、花束、アレンジメント、スタンド花の制作までオーダーに応える。レストランや美容院などの装花や、発表会やコンサートの舞台装花も受け付けている。
山中さんは「木々がそよぎ、鳥がさえずる緑豊かな鎌倉の奥の路地で出合う花が、日々の暮らしに潤いを与え、心に響くものであったらと思う。駅から少し遠いが、散歩がてら寄ってほしい」と来店を呼びかける。「子どものためにも、できるだけ家にいたいと思っていたので、自宅での開業は素晴らしいアイデアだった。いつも『お帰り』と家族を迎えることができているのが何よりうれしい」とほほ笑む。
営業時間は11時~17時。火曜・水曜・木曜定休。金曜は近所のベーカリー「モン・ペシェ・ミニョン」(雪ノ下)の軒先で出張販売(13時~16時)する。