提供:Rethink Creator PROJECT 制作:鎌倉経済新聞編集部
地域の魅力を発見し、発信する人財創出を目指す「Rethink Creator PROJECT」。神奈川で初となる鎌倉セミナーが10月18日、HASTU鎌倉(鎌倉市大町)で開催されました。2020年度全国16か所を巡ったセミナーの最終回となる鎌倉会場の様子をレポートしましょう。
キーワードである「Rethink」とは、視点を変えて考えること。「Rethink」を通して、地域ならではの魅力を地元の人が身近な暮らしの中で発見。自ら考えて地元の魅力を発信することができるクリエイターを創出することで、日本中でクリエイターの地産地消が活発になることを目指すのが「Rethink Creator PROJECT」です。
その実現に向けた学びの場として、「デザインと情報編集の考え方」を地域ならではの題材でワークショップを取り入れたセミナーも実施。3年目となる2020年度には全国16か所で開催、その最終回となるこの鎌倉セミナーは、神奈川では初の開催となります。
鎌倉セミナーの会場となった「HASTU鎌倉」は、地元のクリエイター人財創出セミナーの場にぴったりな「地域とつながる」起業支援施設。セミナー冒頭では、主催のクリエイターズマッチ(東京都千代田区)代表の呉京樹さん、後援の鎌倉市から共創計画部部長の比留間彰さん、協力のカヤック(神奈川県鎌倉市)代表の柳澤大輔さんらが駆け付けて受講者を激励。参加者にも本気度が伝わり、引き締まった雰囲気で講義がスタートします。
明るい雰囲気の会場にリアルで集まった16人、オンライン30人の受講者に向けて講座開始。講義とワークショップの二部構成で、フリーランスクリエイターの羽室吉隆さんと地元鎌倉からカヤックのコピーライター・合田ピエール陽太郎さんによる対話で進行していきます。
「Rethink」を実践するにあたって、視点を変えて物事を見るための重要ポイントは3つ。
1つ目は、伝える相手を具体的にイメージする「インサイト」。例えば、鎌倉の魅力を不特定多数に伝えようとするのでなく、特定の誰かを思い浮かべることで、より具体的でシャープになります。
2つ目が「フィルター」。地元や身の回りを何となく見るのではなく、色やデザインなど属性ごとに注目することで視野が広がり、気付かなかったものが見えてきます。
3つ目は「カプタ」。情報には数値や固有名詞などの事実の「データ情報」と自由に感じ取る印象である「カプタ情報」の2種類があります。とかく固いデータ情報に終始しがちですが、柔らかいカプタ情報を意識して取り入れることで、キャッチコピーの幅も一気に広がります。
講義は羽室さんのポイント解説に対して、合田さんが具体案を出して対話しながら進行。「具体的で分かりやすい」「身近に感じられた」「固くなりがちだが、どうすれば伝わりやすくなるか分かった」など、参加者にも好評でした。
第二部は、いよいよ実践編。鎌倉市から提供された「地元の人にしか知られていないもの」の魅力を伝えるためのお題となる写真が2枚。 1枚目は、鎌倉幕府3代将軍であり歌人でもあった源実朝の歌碑をバックにした由比ガ浜の海。 2枚目は、日本初のバレエスクールを鎌倉の七里ガ浜で設立した日本バレエの母といわれるエリアナ・パブロバのバレエ姿。「へえ!」「知らなかった!」とうなりつつ、これをどう伝えるかのワークショップが始まります。
お題の写真を基に、データ情報を確認。この情報を誰に伝えたいか、そのターゲットを全員が2分間で考えます。会場のリアルの参加者は、用意された小さなシートに記入して提出。オンライン参加者はチャット機能を使って、全員が案を出します。
スクリーンでリアルとオンラインそれぞれの代表的な案を共有しつつ、合田さんが最終的な一案を選びます。ターゲットが決まったら、それをもとに全員で次の「カプタ情報抽出」のステップに。
また2分でカプタ情報4案以上を出し合い代表案を共有、さらに最終ステップの「キャッチコピー案」と進化させて案を出し、全員でひとつのポスター案を完成させる過程を体験しました。こうして、出来上がった作品を紹介しましょう。
最初のお題である実朝の歌碑と海の写真のターゲットとして設定されたのは、歴史に興味がないのに「さねとも」という名前の友人。「気持ちよさそう」「帰ったら昼寝したくなる」「嫌なことを忘れられそう」「波の音が心地いい」など数々のカプタ情報から、キャッチコピーは「波にゆられてタイムワープ」が選ばれました。海の波や現代と過去をつなぐ時空の揺らぎを表現するため、キャッチコピーは「ゆれた」デザインで、あえてカオスを創出しています。
2つ目のお題である、エリアナ・パブロバのバレエ姿。事実情報の説明ではなくカプタ情報が人を引きつけるというこつがわかってきて、遊び心あふれる案がどんどん出ます。
全員の案から選ばれたターゲットは「振り向き姿が好きな人」。このターゲット設定をしたことでカプタ情報も「体が軽そう」「振り向く角度にこだわりありそう」「追いかけると逃げそう」など多彩。そして、選ばれたキャッチコピーは「過去は振り向かない」。誰であるかあえて説明せず、アカデミックな写真を柔らかくするため、コピーの文字デザインも「過去」の文字を反転させたり、手に持たせたりと「いじる」「面白がる」過程を、セミナー参加者全員で共有しました。
2時間半のセミナーは、あっという間に終了。参加者からは「ほかの参加者の意見に触れ、自分では思いつかなかった視点が刺激に」「同じ写真から一つの作品を作るという過程を短時間で経験でき勉強になった」「オンライン参加でもチャットでアウェー感なく楽しかった」などの意見が寄せられ、好評だったようです。 なかでも「デザインやクリエイティブの経験なく参加したが、クリエイティブが身近になった」「クリエイターに興味を持った、発信してみたい」という意見もあり、まさに人材創出セミナーとなった模様。これをきかっけにデザインやクリエイティブに興味を持ったら、次のステップへとして、再発見した地域の魅力を自身で応募する「Rethink Creative Contest」(10/25応募締切済)なども用意されているとのことでした。
主催のクリエイターズマッチは、JT(東京都港区)が実施する社会課題の解決に向き合うプロジェクト「Rethink PROJECT」とのコラボレーションで全国各地の「Rethink Creator」創出を目指しています。最後に、北は札幌から南は沖縄まで全国16カ所のセミナーを終えて、関係者に振り返りと鎌倉セミナーの感想をうかがいました。
地域振興クリエイター 羽室吉隆さん
全国16カ所の最終回が鎌倉でした。鎌倉といえば既に洗練された完成イメージもあるし、どんな雰囲気になるのか、内心ドキドキして臨みました。
細かな事前打ち合わせはせず進行しましたが、ピエールさんが率直かつ多角的な意見を出してくれたこともあり、参加者も面白がって「いじる」案がどんどん出ましたね。これを「よそ者」がやるのではなく、ローカルの人が自分たちで「いじる」ことに意味があると考えます。ポスターはつくる過程を見せるのが目的なので完成しなくてもいいのですが、時間内に2枚とも完成。鎌倉セミナー参加者とピエールさんの発想力と熱意のおかげです。
面白法人カヤック コピー部 合田ピエール陽太郎さん
いつもは社内でコピーライターをしているので、自分自身の発想や着眼点について言語化して「教える」という機会も勉強になりました。
リアルでもオンラインでも、狙い通りの面白がった多角的な案も出ていて、さすが鎌倉だな、と。皆さん熱心で小さな紙にぎっしり案が書いてあって、クオリティーも高く、短時間で目を通して選ぶのが大変でした。自分も「もっとゆらして」など完成までの過程を楽しみ、鎌倉の魅力を再発見し、参加者の皆さんの熱意とセンスにいい刺激をもらいました。これからの発信も楽しみにしています。
クリエイターズマッチ 樋口淳さん
今年はコロナ禍で一時は開催が危ぶまれ、開催方法やオンラインサポートの検討から始まりましたが、全国16か所の最後を鎌倉で盛況に終えることができました。
実は最後を鎌倉に選んだのは、皆さんが分かりやすい鎌倉のイメージや魅力が既にあるので、それを超えることが挑戦の一つでした。「鎌倉の魅力再発見」ということで、鎌倉市のご協力のもとクオリティーの高い写真素材を提供していただき、鎌倉らしいインテリジェンスあるクリエイティブができたと思います。
日本たばこ産業横浜第四支店長 長谷川学さん
参加者が一体となりクリエイティブを形にしていく鎌倉セミナーを、うれしく頼もしく拝見しました。「視点を変える」ことで多角的で柔軟な発想をすることは、クリエイティブ作成にとどまらず、とかく固くなりがちな仕事や日常生活にも応用できますね。
今回神奈川初となる鎌倉開催にあたり、鎌倉市役所をはじめ地元の関係者の方々にも多大なるご協力いただきました。セミナー最終回を、参加者や地域の皆さんと一緒になって鎌倉で締めくくることができ、感謝します。ありがとうございました。
「日本中でクリエイターの地産地消を」を目的に全国でセミナーを展開している「Rethink Creator PROJECT」の詳しい情報はこちらです。動画カリキュラムでは、「Rethink:情報編集」と「Create:デザイン」を約5時間の無料講座を通して学ぶことができます。ぜひチェック下さい。