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大船に新刊書店誕生 人や地域の「未来」つなぐ存在に

開店日に向けて準備中の店内は、床や天井、什器も木製。この後、書籍が搬入されて書棚が徐々に埋まる

開店日に向けて準備中の店内は、床や天井、什器も木製。この後、書籍が搬入されて書棚が徐々に埋まる

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 書店の閉店が相次ぐ大船で11月29日、新刊本を販売する書店「ポルベニールブックストア」(鎌倉市大船3)が開店する。

向かいのコンビニ側から見た店舗正面は間口4メートル。眼鏡店時代の大きなガラスを生かし、枠はイメージカラーのブルーにペイントした

 最近20年で全国で1万店近い書店が閉店し、出版不況ともいわれる中、店主の金野典彦さんは「これまでの仕組みに頼らず、個人が新たに小規模な書店を運営できる環境が整ってきたことが大きい」と出店に踏み切った理由を話す。「そもそもマスを相手にする気はなく、地域の人と地域社会を相手にローカルで小商いがしたかった」と続ける。

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 バブルがピークの頃、新卒で広告代理店に入社した金野さん。「メディア相手の仕事は面白かったが、忙し過ぎてお金を使う暇もなかった」と振り返る。4年で退社し貯金を手にバックパッカーとして1年8カ月、世界中を旅した。「行く先々で地域の人が地域の人を相手に生き生きと面白い仕事をしているのを目にして、いつかは自分もと考えていた」と言う。

 帰国後、技術系出版社に就職し16年間、営業として働いた。「50を過ぎて先を見据えたとき、かつての思いが再燃した」ことからいよいよ実行に移す。当初はゲストハウスなども視野に入れたが、出版に明るかったこと、全て自分一人でできる規模などを考え「書店」に絞り込み物件を探した。

 大船を選んだのは、JR3路線と湘南モノレールが乗り入れる交通の要所でもあり人の往来が多く、まちに広がりを感じていたからという。「ネットで物件を探して最初に出てきた所をとりあえず訪ねてみた」のが元眼鏡店だった。駅から商店街を抜けて市の行政センターに向かう道沿いでコンビニの向かいに位置し、人通りも多い。理想よりもやや広かったというものの、大窓も印象的で「直感的にいい」と判断し、ほかを当たる前に決めてしまった。

 店舗面積は約33平方メートル。「毎日そこで自分が過ごすので、木をメインにした気持ちのいい場所に」しようと、バックパッカー時代に海外で知り合った宮城県在住の友人に設計を依頼。宮城県から杉板など木材を取り寄せ、鎌倉市内の工務店が施工した。

 壁際の書棚以外の陳列台には全てキャスターを付け移動できるようにしたのは、「トークショーなどイベントができるように」。「あくまでもベースは本屋だが、地域とつながることならあえて本屋らしくないこともやっていきたい。地域の人同士や外の人ともつながる場になれば」と抱負を話す。

 並べるのは、金野さんが選んだ人文や社会系の書籍が中心。「売れている本が必ずしもその人にとって本当に必要な本ではないかもしれない」と、店のコンセプトも「みんなのための本はない。あなたのための本がある」にした。

 「情報ならネットでも簡単に手に入る時代だから、ハウツー本やビジネス本のような即効性のあるものは置くつもりはない。たとえ時間がかかってしまっても、じわりと人生に役立つ本を並べたい」。雑誌もほとんど置かない代わりに、リトルプレスやZINEといった地域文化に関する本は積極的に扱いたいという。

 店名の「ポルベニール」はラテン語で「未来」を指す。旅の途中、パタゴニアに同じ名前の町があったのも命名の理由だという。そのときに見たペンギンをシンボルマークにした。

 金野さんは「ここでたまたま手にした一冊がきっかけで何かを始めるなど『未来』への出発点になればうれしい。本を手に取って選ぶことやイベントなどネットでは買えないリアルな体験をここで」と来店を呼び掛ける。

 営業時間は、平日=11時30分~20時(14時~15時は昼休み)、土曜=10時30分~20時、日曜=10時30分~19時。水曜、月2回火曜定休。