鎌倉若宮大路沿いの商業ビル2階のカフェバー「Line_Line(ラインライン)」の開店前にコーヒーやモーニングを提供している間借りカフェ「Sunday morning cafe“i”(サンデーモーニングカフェ・アイ)」が独立に向け動き出した。
小学3年生の頃から35年もコーヒーを入れているという池田さん。いつも笑顔だがこのときばかりは真剣なまなざしに
「夢はコーヒーの屋台」と話すのは店主の池田靖弘さん。「鎌倉ではまだ2年半だが東京・京橋時代も含めると4年半も『間借り』でコーヒー屋をやってきた。経験も積めたので、そろそろ独立を考えている」と続ける。
池田さんがコーヒーと出合ったのは9歳の頃。鎌倉駅西口で親戚が喫茶店を営んでおり、遊びに通っているうちに「大叔父からハンドドリップコーヒーの入れ方の手ほどきを受けた」のが始まり。「そんな小学生、なかなかいないはず」と笑って振り返る。当時は砂糖をたくさん加えて飲んでいるだけだったが、次第にコーヒーの世界に引き込まれていった。
「就職活動では本気でコーヒーの道も考え迷った」ものの、自動車会社のエンジニアになった。その後も趣味としてコーヒーを入れ続けていたが、2009年にコーヒーコーディネーター資格を取得したところから池田さんのコーヒー愛が熱を帯びてくる。
カフェ巡りのほか、各地からコーヒー豆を取り寄せ、自ら焙煎(ばいせん)も始めた。たまたま通っていた写真教室のある京橋のギャラリーでは朝活の一環でコーヒーを入れたり、コーヒー好きが集まる「東京珈琲会議」の議長を務めたりした。写真教室の文化祭では初めて不特定多数の客にコーヒーを振る舞った。
こうした経験を背景に2015年、ギャラリー内に間借りする形でシェアカフェ「CENTRE THE COFFEE」を立ち上げる。自らコーヒーを提供する傍ら、卒業すると実際に同カフェに立てるマスターを育成する「school of CENTRE THE COFFEE」を開校。池田さんらが指導した20代~50代の卒業生がマスターとして週替わりでカウンターに立った。
2016年にギャラリーが業態変更することになり同カフェなども閉じ、以前からゆくゆくはと考えていた地元鎌倉に活動の場を移した。小中学校時代の同級生が経営する店に間借りし、自分の仕事が休みの日曜朝のみの営業を始めた。
店名に付いている「i」は、かつて池田さんがコーヒーと初めて出合った親戚の喫茶店名「アイ」からもらった。席数は18席(テーブル14席、カウンター4席)。メニューは、しらすトーストか季節のジャムトーストに自家焙煎コーヒーを付けるモーニング(500円)。カフェオレは100円増し。
「当時はまだ朝から開いている店が少なかったこともあり、通りの看板を見て観光客が想像以上に来店した」と驚く。地元でも評判となり、今では近所の人もリピーターになりにぎわっている。
リピーターも期待するのは月替わりのコーヒー豆で、「せっかくだから一般的でないものを選ぶことが多い」という。池田さんがこだわるのは酸味や苦みよりも甘み。甘みを引き出すため、時間や火力などを微妙に変えながら最低でも4パターンの焙煎を試しているという。「『こんなマンデリン、飲んだことがない』と言われたときは素直にうれしかった」と笑顔を見せる。
現在は「ハンドドリップ体験会」「手網珈琲焙煎会」「野点珈琲会」などワークショップも不定期に開いている。
「気がつけば小学生の頃からコーヒーを入れ続けて35年間。そろそろ次のステップへ」と今後を見据える池田さんだが、「実はきちんとした店を出そうと思ったことは一度もなくて、理想は屋台」と言う。「まだ公表はできないが、企業の敷地に屋台かキッチンカーを出せないかと現在交渉中。さまざまな場所で、さまざまな人に自分なりのコーヒーを気軽に楽しんでもらえるスタイルがベストだと考えている」と話し、「副業から専業にするつもりだけれど、店舗内から敷地内に変わるだけで、結局『間借り』ですね」と笑う。
営業時間は8時30分~11時30分(11時~11時30分は「Line_Line」のメニューも注文できる)。日曜のみ営業。