新元号「令和」が発表され、出展の万葉集が注目される中、かまくら駅前蔵書室(鎌倉市小町1)で4月6日、書籍「よみたい万葉集」をテーマにした読書会が開かれ、満席のにぎわいだった。
まつしたさん(右)が書いた本を個人的に薦めていたあいさん(左)と小田さん(中)がつながりこの日のイベントが生まれた
「何カ月も前から企画したのに結果的にタイムリーになり、参加者さんにも驚かれた」と笑って話すのは主催した小田妙子さん。「もともとは万葉集の素晴らしい入門書であるこの本を皆さんに知ってもらいたかっただけ」と続ける。
従来にはない切り口で万葉集をひもといた、オールカラー140ページの同書は、大阪府立大の村田右富実教授監修で、まつしたゆうりさん、松岡文さん、森花絵さんの共著。万葉集好きな女子「鳥子」が専門家の「鹿先生」と対話するスタイルで歌を分かりやすく紹介。鳥、笑、装、恋、旅、挽歌(ばんか)など11のテーマに分類しイメージイラストが添えられ、「歌人別ソング集」「万葉新聞」「万葉クッキング」などユニークな項目も並ぶ。
2015年2月の発売以来、発行部数は1万7000部。発行元の西日本出版社によると、新元号発表翌日の2日には残っていた1530冊も全て出庫し、急ぎ4度目の増刷に入ったという。
「ひつじブックス」という屋号で各地の一箱古本市に出店しているあいさんが、2017年に古書店「双子のライオン堂」(東京都港区)で開かれた「よみたい万葉集原画展」を訪れ、数日後のトークショーでイラストも描いたまつしたさん本人と出会った。「どれだけ心を込めて作った本なのかを直接聞いて応援したくなった」とあいさん。「知人に薦めたり、古本市なのに新刊を売ったりしていた」ところ、たまたま手に取ったのが小田さんだった。
若い頃に万葉集が好きで勉強会にも通っていたという小田さんは、「これまでに見たこともない万葉集本だったので、昨年6月に初めて開いた読書会の課題図書にした」と振り返る。「盛り上がった読書会の様子をツイッターに投稿すると、著者のまつしたさんが『またあれば参加したい』とコメントをくださった」と言う。
今回の読書会は、関西在住のまつしたさんと数カ月前からスケジュールを調整し実現した。司会はあいさんが担当し、同書の紹介に続き、参加者全員が好きな歌を選び、それぞれの思いを発表した。この日、初めて同書を手にする参加者もいたが、「万葉集がより身近になった」「こんな楽しみ方があるということに気付かせてくれた」「あらためて読んでみようと思った」などと感想を寄せた。
まつしたさんは「皆さんの万葉集との向き合い方、愛し方、楽しみ方、感じ方を直接知ることができたのは貴重な体験。あらためてこの本を作って良かったと実感した」と話し、「4刷で新たに巻かれる帯には、『令和』という文字はあえて入れなかった。決してブームで終わらせずに、ずっと愛してほしいので」と続ける。
あいさんは「より多くの人が万葉集に興味を持ってくださり、この本の面白さも広がればうれしい」と話し、小田さんは「参加者だけでなく、まつしたさん、あいさんにも喜んでいただけてよかった」と声を弾ませた。