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鎌倉の朝食屋から生まれた「みんなの句集」 出版記念の出張句会も

できあがったばかりの句集を手にする内堀さん。「時間に追われている人に、ゆったりとした鎌倉らしい時間を感じてもらえるはず」

できあがったばかりの句集を手にする内堀さん。「時間に追われている人に、ゆったりとした鎌倉らしい時間を感じてもらえるはず」

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 鎌倉の飲食店「朝食屋COBAKABA(コバカバ)」(鎌倉市小町1)で毎月開かれていた句会をきっかけにできた書籍「みんなの句集」が5月20日に発売される。

店内で平日夜に開かれている句会。作るのも発表し合うのも豊かな時間だという

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 7時から朝食を提供し週末には行列もできる同店。「鎌倉には表現者が多いので、店内を展示スペースやライブの場としても使ってもらっている」と話すのは店主でミュージシャンでもある内堀敬介さん。「俳句をやっていた祖父の影響もあり、それぞれの表現を見せ合うゲームのような句会をいつか開きたいと思っていた」ところ、大手化粧品メーカーのクリエーティブディレクターで俳人の小助川駒介さんと出会い相談。2015年5月、「肩の力を抜いて鎌倉らしくフリースタイルで」と句会を始めた。

 呼び掛けるとサラリーマンや子育て中の母親、イラストレーター、ダンサー、料理人、雑貨店オーナーなど職業や立場、世代も異なるメンバーが集まり「コバカバみんなの句会」と命名、月1回平日夜に開いてきた。

 初心者がほとんどだったが、「17文字に収めるために工夫する面白さ、匿名で発表して好きな句を選び最後に作者が分かるという公平性やゲーム性の魅力に、みんなはまっていった」と言う。回を重ねるごとに季語を知り、景色の見え方も変わってきた。「振り返ると、その時々の自分の境遇を思い出し、仲間の境遇を思うようになった」と句会の効果を話す。

 「せっかく続けてきたので足跡を残そうという話が出て書籍化を考えた」と内堀さん。毎年5月に市内で開かれるブックカーニバルをゴールしようと決まると、「絵を描きます、秘書的な仕事をしているのでスケジュール管理をします、広報をやっているのでプレスリリースを書きます、とみんなが手を挙げてくれた」と続ける。句会の後に酒を飲みながら編集会議をしてスムーズに進行していった。

 同書には3年間の「今月の一句」や「特選句」を季節ごとに並べ、メンバー16人の「自選10句」も掲載。文字の背景にはメンバーがイラストを描いた。「僕らにとって表現の集大成なので自由に。でも俳句の世界を壊さない程度に」と笑う。初めて俳句に接する人にもわくわく感が伝わるようアートブックのように仕立てた。

 「多様なメンバーが多様な句を読んだ、万葉集スタイルのオムニバス。少量多品種の鎌倉野菜のよう」と内堀さん。「まだまだという句もたくさんあると思うが、それぞれの個性がにじみ出たそれぞれの17文字を味わってもらえれば」と話し、「鎌倉は高浜虚子が半世紀暮らし、久米正雄や久保田万太郎など文士たちが集まっては句会を開いていた町で『俳都』といってもいい。歴史や伝統を背景に、ここから俳句を広げていきたい」と意気込む。

 同書はA5版50ページ、オールカラー。600円。コバカバ、ブックスモブロほか、ブックカーニバル会場でも販売する。

 5月18日に開かれる一箱古本市「ブックカーニバルinカマクラ」の第3会場「鎌倉カルチャールーム」(鎌倉市由比ガ浜1)で、出版記念の「お披露目出張みんなの句会」を開く。開催時間は15時~16時30分。参加費は、大人=300円、子ども=100円。季語「風薫る」「葉桜」「はだし」「ソーダ水」「夏の海」を入れた俳句を3句作り持参する。

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