鎌倉の由比ガ浜通りの空き家(鎌倉市由比ガ浜1)を使い8月10日、独自のストーリーが展開する「鎌倉お化け屋敷2019~人間紫陽花(アジサイ)」が開かれる。主催はクリエーター集団「KYOUI」。
ポスター用に制作した人間紫陽花。不慮の事故で亡くなった夫のためにアジサイを供えるところから物語が始まる
「皆さんがイメージするおどろおどろしいお化け屋敷というよりも、アート性が高い世界観を提供する空間にしたい」と話すのは同団体メンバーで発起人の谷口敦紀さん。「これまでにないイベントで地域を盛り上げるお手伝いができれば」と続ける。
谷口さんは武蔵野美術大在学中に学園祭でお化け屋敷を企画運営した。美大ならではの空間と演出が話題となり、2016(平成28)年11月に東京で開かれた「お化け屋敷サミット」に招かれ登壇。京都三条会商店街で3年間お化け屋敷の運営などを行った人物と出会った。
今年2人は再会し「関東でもどこかでお化け屋敷をやりたい」という話に。すぐに「候補地として思い浮かんだのが鎌倉で、彼も共感してくれた」と谷口さん。「学生の頃、にぎやかな小町通りではなく、御成通りや由比ガ浜通りを歩いたことがあり、観光地というよりもローカルな雰囲気が味わえるエリアとして印象に残っていた」と振り返る。
会場を探すために市内の複数の不動産店にアプローチすると、空き家活用などを積極的に行っている不動産会社の「ENJOY WORKS」(鎌倉市由比ガ浜1)から連絡があり、5月末に現地に足を運んだ。
由比ガ浜通りの元和菓子店跡で、閉店後は物件のオーナーである隣の「笹屋米店」が倉庫として使っていた建物だった。「築90年ほどで、特に奥は演出がいらないくらい薄暗い雰囲気で気に入った」と笑う。
お盆の時期を選んだのは、混雑するアジサイのシーズンが終わると観光客も減り、海水浴客は素通りするため閑散期になるという声を聞いたから。ターゲットとなる子どもや学生が夏休みということと、かつて杉浦さんが手掛けたお化け屋敷での同時期の集客実績も後押しとなった。
鎌倉駅から長谷観音までの通りの店舗など一軒一軒にあいさつした際も「お化け屋敷だというと最初はびっくりされたが、京都の例を出すと応援の声に変わった」という。
地域を盛り上げたいという谷口さんらの意気込みに飲食店も応え、11店舗でコラボメニューを提供することになった。「yuk-the public house」ではメキシコの死者の日にちなんだクラフトビール「デイ・オブ・ザ・デッド」3種を、「逗子カレー」では血をイメージした真っ赤なトマトとチリの効いた「悪魔の牛すじトマトカレー」を提供する。「CHUNON BRILLANTE」ではメンバーも一緒に試食を繰り返し、一味唐辛子をトッピングした見た目も楽しい「おばけソフト一味ベリー」が出来上がった。コラボメニューを注文すると入場チケット100円引き券を進呈する。
お化け屋敷のテーマは「人間紫陽花」。「鎌倉らしい素材を使いたかった。アジサイで名高い長谷寺へ続く通りなのでぴったり。ジメッとした感じ、土壌によって花の色が変わるなど、きれいなのに不気味なイメージにひかれた」と話す。
ツイッターでプロモーションムービー制作を呼び掛けると、ホラー映像制作団体「OLD ROOTS」が想像以上のクオリティーで仕上げてくれた。同時に資金集めのために始めたクラウドファンディングでは目標額を達成し、ネクストゴールとして支援者数70人を目指し継続している。
集まったメンバーと時には徹夜でミーティングするなど何度も議論を重ねた。7月中旬から始めた設営では、メンバーやボランティアらが連日汗を流している。会場の面積は約116平方メートル。細長い建物の特性を生かして、スペース以上の広さを感じさせるコースを作っているという。
ボランティア募集では「お化け役を希望する人が多く、中には一般のアミューズメント施設でも活躍中の半ばプロもいて楽しみ」と眼を輝かせる谷口さん。「制作メンバーには美大出身者も多く、遊園地やお祭りを超えるアーティスティックでリアルな体験ができる空間になるはず」と自信をのぞかせ、「まずは足を運んで、この通りの魅力にも触れていただければ」と来場を呼び掛ける。
開催時間は12時~19時。入場料は800円(未就学児500円)。19日まで。クラウドファンディングは4日23時59分まで。