鎌倉の夏の夜を彩る「ぼんぼり祭」が8月7日、鶴岡八幡宮(鎌倉市雪ノ下2)境内で始まり、夕涼み客などでにぎわった。
しりあがり寿さん(上)、市民栄誉表彰を受けた角野栄子さん(下)らは今年初めての出品
1938(昭和13)年、鎌倉文士など文化人らの協力で始まった同祭りは今年で81回目。鎌倉ゆかりの著名人などに書画を依頼し、表具師がぼんぼりに仕立てたものを境内に飾る。
夕暮れとともに巫女(みこ)らがろうそくを手にぼんぼり一つ一つに火をともして歩く。夜は幻想的な雰囲気に包まれ、鎌倉を代表する夏の風物詩にもなっている。
今年も日本画家の平松礼二さん、洋画家の大津英敏さん、東大名誉教授の養老孟司さん、漫画家のわたせせいぞうさんや安野モヨコさん、蛭子能収さん、映画監督の庵野秀明さん、歌舞伎役者の中村吉右衛門さんや中村獅童さん、タレントの竹中直人さんやみのもんたさん、神奈川県知事の黒岩祐治さんなどの書画が並んだ。
昨年「国際アンデルセン賞」を受賞し市民栄誉表彰を受けた児童文学作家の角野栄子さんや3月に必勝祈願に訪れ現在首位争いを展開しているプロ野球・横浜DNAベイスターズのラミレス監督や筒香嘉智選手なども初出品。同宮と親交のある英国、イタリア、ギリシャなど6カ国の駐日大使らの作品も。
若宮大路の三の鳥居から本殿に向かう参道に大型(縦65センチ、上辺50センチ、下辺45センチ)が、十字に横切る流鏑馬(やぶさめ)馬場などに小型(縦30センチ、上辺43センチ、下辺38センチ)の合計400基が並び、浴衣姿など多くの人が足を止めて作品を楽しんでいた。
葉山町から訪れた会社員の高橋和也さんは「著名人だけでなくさまざまな書画が並び毎年楽しみ。篆刻(てんこく)家になった高校の担任の作品を見つけて驚いたこともある」と声を弾ませた。
期間は、立秋の8日を中日に前後の3日間。7日は15時から「夏越(なごし)祭」、8日は17時から「立秋祭」、9日は10時から「実朝(さねとも)祭」も境内各所で開く。
6月にオープンした境内の「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」では25日まで特別展「雪洞(ぼんぼり)~ぼんぼり祭の誕生1938~1955」が開かれている。
同宮に保存されていた2万点を超える作品の中から、世相を反映したものなどを展示した。台形を逆にしたぼんぼり型の額装が特徴。作品に付いた染みやシワなどが、実際に境内に飾ったことをリアルに伝えている。
同祭が始まった当時の社務日誌も展示。川端康成や林房雄などに作品を依頼した記述などが読み取れる。同館学芸員は「奉納されたものだからこそ丁寧に保存されていた。歴史を発掘しているような気分で、つながりをひも解いていく作業は楽しかった」「80年後に後世の人がこうして作品を見ているとは思わなかったはず」と話す。
同宮では書画の原画をもとに毎年うちわを制作しているが、鏑木清方、川端康成、鈴木大拙、棟方志功、有島生馬、片岡球子、加藤東一作の7点を復刻版として数量限定で、ミュージアムショップで販売している。
同館特別展示は10時~16時30分。同祭り開催中の7~9日は18時まで。
ぼんぼりの点灯は日没~21時。