鎌倉の「ギャラリー一翠堂(いっすいどう)」(鎌倉市小町2)で12月1日、明治・大正・昭和に建てられた鎌倉市内の建物をイラストで描いた「かまくらのすてき 伊東雅江作品展」が始まった。
「20数年前、神戸の洋館を中心に描いていたある方の作品が好きになったことがきっかけ」と話すのは画家でイラストレーターの伊東雅江さん。「あらためて地元の鎌倉を見渡してみると、すてきな建物がたくさんあり自分でも描いてみようと思った」と振り返る。
市内を歩いたり、時には市役所などで情報を得たりして出掛けた。商店や個人宅では必ずあいさつをして「建物の背景にあるストーリーをうかがって」から描いたと言う。「取り壊しが決まっているお宅では、あふれ出す思いやたくさんのエピソードを聞くことができた」とも。
作品は2001(平成13)年から卓上カレンダーにまとめて毎年販売した。2007(平成19)年、画材店の紹介で同ギャラリーの木内史子さんと知り合う。「優しいタッチや色合いが印象的。建物を通して懐かしさと一緒に当時の出来事も思い出した」という木内さんが、カレンダーの原画展を提案し、夏に開いた。
2008(平成20)年には、鎌倉の景観やまちづくりについて考えるきっかけにと建築家や主婦らが制作した絵本仕立ての書籍「鎌倉 まちのいろは」(冬花社)のイラストや地図など全てのビジュアルを伊東さんが担当した。
2017(平成29)年4月、鎌倉市都市景観課からの依頼で、冊子「かまくらの すてきな たてものの えほん~鎌倉市景観重要建造物等 絵でみる図鑑~長谷エリア」を制作した。同年10月には、2冊目となる「鎌倉駅周辺エリア」版を「ひとまち鎌倉ネットワーク」から発行した。
今回の作品展は、昨年11月、冊子に掲載した作品を鎌倉市川喜多映画記念館・旧川喜多邸別邸(和辻邸)に展示した「かまくらにのこる すてきな たてものをめぐって」展に足を運んだ木内さんが、再び伊東さんに声を掛け実現した。
「雰囲気のいい古民家での展示もすてきだったが、人通りの多い小町で、より多くの人に見てもらいたくて」と木内さん。伊東さんは2020年のカレンダー制作と重なったが、展示に向けて新作も用意したという。
会場には伊東さんのファンのほか、通り掛った観光客の姿も多い。建物を紹介するコメントを読みうなずく人、「知らなかった」と話す人、「これから行ってみよう」とまち歩きに出掛ける人も。
「鎌倉 まちのいろは」に掲載した近代鎌倉を俯瞰したイラスト原画の隣に並べた作品は今回が初公開。同じアングルから鎌倉時代の鎌倉を描いており、比べて見ることができる。
「実は、これまでに描いてきた建物の半数近くが取り壊されてしまった」と伊東さん。「景観や建物保存の呼び掛ける活動というより、私にできるのは、絵を通してこんなすてきな建物や風景があることを知ってもらうこと。知ってくだされば、大切にしたいと思ってくれるはず」と話す。
開催時間は11時~17時。入場無料。今月8日まで。