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窓がピンクに染まる「さくら」の間 鎌倉駅前のレトロなホテルで今年も予約受け付け

昨年の満開時の「さくら」の間の窓。普段は見える横須賀線の電車も花びらの向こう

昨年の満開時の「さくら」の間の窓。普段は見える横須賀線の電車も花びらの向こう

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 JR鎌倉駅ホームからも見えるレトロな素泊まりホテル「ホテルニューカマクラ」(鎌倉市御成町)で、春になると窓から満開の桜が楽しめる2階「さくら」の間の予約が今年も入り始めている。

スタッフ最高齢の尾上さんはもうすぐ83歳。「来年もさくらが見られるかなと言い続けてこの年に」と笑う(「さくら」の間で)

 「満開時は窓を開けるといい香りがしてきて、花びらも舞い込んでくる」と話すのは、スタッフの尾上澄江さん(82歳)。53歳で入社し、今も清掃やベッドメーク、フロント業務など若いスタッフと同様に夜勤もこなすベテランだ。「腰が痛むのでちょっと座らせて」と「さくら」の間の椅子に腰を下ろした。

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 「私が来た当時は建物自体も痛みがひどくて、客室として利用していたのはたったの3部屋」で、その後、20年ほど掛けて少しずつ修繕を重ね、現在のようなスタイルになったという。

 同ホテルの前身は料亭だった。夏は避暑客を相手に貸間も営んでおり、1923(大正12)年の夏に芥川龍之介と歌人の岡本かの子が出会った場所としても知られている。その年の9月1日に関東大震災がありほぼ全壊、翌年「山縣(やまがた)ホテル」として新築された。

 昭和に入り現在のオーナーである西村家が買い取ったが、戦後は米軍に接収されたり、企業の社員寮になったり、カフェとして営業したりなど変遷を重ねた。尾上さんが勤め始めた1990(平成2)年ごろから、本格的にホテルとして再出発している。

 築96年になる本館は木造2階建て。延べ床面積303.26平方メートルで全10室。館内は全体にアールデコ調で、開業当初からの調度品なども多い。ほとんどの窓が戦前の洋館に見られる「上げ下げ窓」。重りの付いたひもで軽く上下でき、途中で止めることもできる。2004(平成16)年には鎌倉市の景観重要建築物にも指定された。

 入り口前には、樹齢90年といわれる桜の大木が枝を広げている。2階「さくら」の間の東向き窓は、花が満開になると普段は駐車場越しに見える駅のホームも見えないほどで、「まるで額縁のよう。掃除をしていてもウキウキする」と尾上さんは笑顔を見せる。

 「毎年、桜の開花予報が出ると一気に予約が入る」と受け付けスタッフ。「なかなかその通りにはいかないものの、花散らしのような強い風雨がなければ一定期間楽しんでいただける」とも。今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、例年より出足は鈍いという。

 「『また来年も来るね』と桜の時期を楽しみにしている客も多い」と話す尾上さん。「いろいろな人と出会えるのも楽しみ」で、「沈んだ顔をした女の子がいたので仕事が一段落したら話を聞くよと、夜にロビーで話したら死のうと思っていた」と打ち明けられたり、「早朝4時にチェックイン」してくる酔客がいたり、「親に連れられて来ていた子どもが大学生になって今度は仲間を連れて来たり」とエピソードは尽きない。メディアの撮影も多く「有名人とも会えるのも楽しみ」と目を輝かせる。

 「素泊まりということもあり、チェックイン後はいい意味で放ったらかしにしてしまうが、お客さまからは『その距離感がうれしい』とよく言われる。お客さまのペースで、お客さまらしく過ごしていただければ」とスタッフ。尾上さんも「あれがだめ、これがだめとうるさく言わないホテルなので自由に楽しんで。桜が咲くのが今年も楽しみ。その窓を開けると、まるで桜の雲の中にいるよう」と話す。

 「さくら」の間は、1室2人利用=1万3,000円(土曜・祝前日は1万6,000円)、1人利用=8,000円(同9,000円)。ほかは6,000円(同8,000円)~。全て素泊まりだが、予約で朝食セットを注文できる。