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新型コロナきっかけに同窓生集結 鎌倉の飲食店「えびす亭」手作り改装 

組み上がった小上がりの床にペンキを塗る福澤さん(奥)と藤井さん

組み上がった小上がりの床にペンキを塗る福澤さん(奥)と藤井さん

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 新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響で窮地に立たされていた飲食店「鎌倉えびす亭」(鎌倉市雪ノ下2)が、店主の友人らの共同作業で改装工事を行っている。

この日も同窓生たちが集まった。奥左が藤井さん、奥中央が宇留間さん

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 鶴岡八幡宮西側の大型の駐車場近くで営業を続けていた同店だが、2月中旬から観光バスも姿を見せなくなり、売り上げは3分の1に減った。NPO法人みらくる(大阪市)の協力を得て3月13日から、来店者の寄付で子どもたちに「コロナに勝つ丼」を提供するプロジェクトに参加した。

 「おかげさまでメディアにも取り上げていただき、寄付してくださる大人、無料でカツ丼を受け取る子どもさんがたくさん来店してくださった」と話すのは、店主の福澤壮介さん。「小中学校時代の同窓生たちも駆け付けてくれたのは想定外でうれしかった」と続ける。

 小学校の同級生だった久留さと子さんもその一人。「ニュースをただシェアして発信するだけでは気持ちは伝わらないと思い、実際に出掛けて食べてリアルを発信した」と話す。小中学通じての友人だった「鎌倉美容院URUMA」(小町)の宇留間祐介さんはSNSで同窓生のグループを立ち上げ、仲間と情報を共有した。

 同店には以前から時々顔を出していた宇留間さんは、福澤さんから「時間ができたので改装するつもり」という話を聞く。「これまでは観光客向けの店だったが、これからは地元の人にゆっくりしてもらえる店にしたい」という福澤さんの思いに共感し、改装のアイデアを出し、プロデューサー的な役割を担うことになった。

 改装工事初日の3月31日。福澤さんがカウンター内を片付けていると宇留間さんが現れ、様子を撮影した動画をSNSで配信した。福澤さんは「一人でやるつもりでいたので、とにかくうれしかった。ただ素人仕事なので、どこまでできるか少し不安ではあった」と言う。

 翌朝、冷たい雨が降るなか現れたのは藤井工務店(二階堂)の藤井圭太さん。やはり小中学の同窓生だった。実は前夜、客として出掛けた宇留間さんの美容室で、同店の改装の話を聞き、「雨で現場が休みになったから」駆け付けたという。

 この日はプロの指揮で、客席中央で客導線の妨げとなっていたカウンターの取り壊しから工事が始まった。藤井さんは「ちょうど座敷を新設するくらいのストックがあったので」と建材も無償で提供することを申し出た。

 その後は連日、2人から5人の仲間が作業の手伝いや差し入れに現れた。外壁のメニュー看板などを全て取り外し、和風だった室内もシンプルでシックな和モダンな空間へと一つ一つ手作りで改装していった。

 「自分はテクニックを教えるだけで、実際に手を動かしてくれたのは仲間たち」と藤井さん。それぞれが得意分野を生かして手を動かしたという。宇留間さんも「久しぶりに会った仲間の絆が日々深まっていくようだった」と振り返る。

 SNSのグループで進捗(しんちょく)状況を発信すると、応援や励ましの声が日に日に増えていった。宇留間さんは「困っている友だちがいれば手伝う、助け合うことができるモデルケースになった」と手応えを感じ、今後も相互に支え合う「Team鎌倉」を仲間と共に立ち上げた。

 店内外の改装と同時に、福澤さんはメニューのリニューアルも進めている。これまでの40以上あったメニューを、ラーメンとマグロ料理を中心に30程度に絞り、グレードも上げることに。

 福澤さんは「自分も大変なこの時期に、昔の友だちがこんなに応援してくれありがたい。今度はほかの仲間の力にもばれれば」と話し、「5月にはスタートできるように準備を進めているが、その前にテークアウトも始めたい」と意欲的。

 宇留間さんも「こんなことがなければワンチームにならなかった。えびす様がみんなを呼んでくれたのでは」と笑顔を見せた。

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