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手作りマップが街と人をつなげる 「鎌倉の田舎」腰越を愛する主婦が企画

発案者の中嶋さん(左)と掲載店「ONE KAMAKURA」の小野夫妻が同店のテラスで一緒にマップを折る作業を

発案者の中嶋さん(左)と掲載店「ONE KAMAKURA」の小野夫妻が同店のテラスで一緒にマップを折る作業を

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 鎌倉腰越の商店などを紹介する手作りマップ「腰越ぶらり街歩き」の2020年版が完成し、9月中旬から掲載店舗などで配布されている。

手作り感満載の「腰越ぶらり街歩き」マップ

 「腰越のことを全く知らずに引っ越して来たので、まずはどんな店があるのか知りたかったのがきっかけ」と話すのは、同マップ発案者で主婦の中嶋寿子さん。「観光客にとってもガイドマップがあったら便利なはず」と、2017(平成29)年秋に自費で制作し無料配布したのが始まり。以来、最新情報を加えながら仲間たちと共に年に1回発行を続けてきた。

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 今回は、最近増えている飲食店の紹介、コロナ禍を受けてのテークアウトや出前の情報などにも力を注いだ。

 昨年オープンの「スモールユリ」もその一つ。長崎出身の店主・金子順子さんが作る「トルコライス」が人気で、遠方から足を運ぶファンも多い。「物件を探して初めて腰越に来たとき、海風が心地よかったのを覚えている」と金子さん。「住んでみると、人の良さも実感。市外からのお客さまからも『にぎやかな鎌倉駅周辺より、田舎っぽくてのんびりしている腰越が好き』という話をよく聞く」と続ける。

 神戸(ごうど)川沿いのカフェ「イヌゾ」も昨年のオープン。店主の後藤康紀さんは、このところ腰越に増えている都会からの移住組だ。「都心だと顔を合わせたことがあっても知らないままが普通だが、ここは距離感が近いため、お互いを知る機会が多い。僕のようなもともと田舎から出て来た者にとっても、そんな文化が懐かしい町」とほほ笑む。「接客が得意でなかったが、このマップがお客さまとの会話のきっかけになることも多く、とてもありがたい」と、今年もカウンターに設置した。

 「イヌゾ」や「腰越珈琲」などカフェをはしごするという近所に住む主婦の浅葉美恵子さんも、マップを手に「こんな店ができたんだと、よく情報交換する」と言う。「子どもが大きくなってPTAを卒業すると、井戸端会議はカフェでやるように。このマップで腰越にはカフェも多いことが分かり重宝している」と話す。

 「マップを作り続ける中嶋さんは、もう変態レベル」と笑顔で口をそろえるのは、アパレルとアクセサリー「ONE KAMAKURA」店主の小野修平さん、真由美さん夫妻。「何の見返りもないのに、どこまで腰越愛を貫くのか。『腰越ラジオ体操』を1年半も続けていたり、9月12日には『腰越おもちゃ花火大会』を開いたり。でも、そんな中嶋さんが好きだからこそ、周囲も気持ちよく巻き込まれていく」と修平さん。真由美さんは「誰かが仕切るのではなく、それぞれがサポートできることを自分で見つけて手伝っていく。腰越では、多分昔から当たり前のようにやってきたこと。今は、中嶋さんがそのきっかけをつくってくれている」とうれしそうに話す。

 刷り上がったA3大の紙を、友人たちが協力を申し出てA6サイズに折り畳む。これまでは外注していたマップのレイアウトも、制作ソフトを使いこなせるようになった夫の中嶋祐一さんが担当するようになった。以前は掲載の許可を取りに回っていたが、現在は仲間が声掛けしてくれたり、店舗から「載せて」と声が掛かったりするようにもなった。

 中嶋さんは「実は、私自身が皆さんに助けられている。よそ者を快く受け入れてくれ、住めば住むほど好きになっていく腰越には、私たちが忘れそうになっている、昔ながらの温かい人と人のつながりがある」と話し、「観光客でにぎわうわけでもなく、見どころがたくさんあるわけでもない。でも、歩いてみると狭い範囲にすてきな店がいっぱいある。このマップを見て訪ねていただくと、きっともっと腰越が好きになるはず」と目を輝かせる。

 ただ1軒残っていたコンビニが撤退してからは、スーパー「ヤオミネ」で道を尋ねる人が増えたという話を聞き、中嶋さんは同店を取材。早速、行政センターや幼稚園、駐車場などのスポットも新たに加えたという。

 同マップは腰越エリアの飲食店などに設置、無料配布中。インターネットでも閲覧できる。

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