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鎌倉にだし巻き卵専門店 人気の豆腐ハンバーグ専門店が土日祝の夜限定で

でき上がっただし巻き卵を手にする田所さん。自信の品に笑顔がこぼれる

でき上がっただし巻き卵を手にする田所さん。自信の品に笑顔がこぼれる

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 鎌倉駅西口近くの豆腐ハンバーグ専門店「鎌倉 六弥太(ろくやた)」(鎌倉市御成町)が10月3日、土日祝の夜だけ開く「出汁巻(だしま)き玉子専門店 鎌倉六弥太」として営業を始める。

ササの葉に載せて提供するテークアウト。両端を持って取り出せよう配慮した

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 京都の料亭などで経験を積んだ店主の田所裕基さんが考案した、鎌倉豆腐と鶏肉を使いふわふわに焼き上げる「鎌倉バーグ」を提供している同店。2012(平成24)年のオープン以来、独特の食感とヘルシーさが評判となり、閉店時間を待たず売り切れ終了になることも多い。

 夜は京料理の「おばんざい」を提供していたが、「コロナの影響で客足が遠のき、夜は予約が入った場合のみ営業している状態」と田所さん。「手をこまいているだけでは進まない。何かできないか」と考えて思い浮かんだのが「出汁巻き玉子専門店」だった。

 このだし巻き卵こそ、田所さんの料理人として原点だった。茅ヶ崎で生まれ育ったが、進学時に京都にある大学を選ぶ。「実は和食の料理人を目指していたので、それなら京都しかないと思って」と笑う。入学後、仕事を終えた料理人が集うという居酒屋でアルバイトを始めた。しばらくすると顔見知りになった料理人に誘われ、目標だった懐石料理店で働くことに。

 そこで最初に教えてもらったのが、だし巻き卵。来る日も来る日も練習を重ねた。鍋の上で、卵代わりの布巾を丸めては、また一から巻き直した。「アルバイトだったので、板前さんが優しく教えてくれたのがありがたかった」と振り返る。3カ月後、「朝食に出してみるか」と任された時にはうれしさと同時に手が震えた。食べて笑顔になる客の姿が忘れられない。

 卒業後、その店に就職することができ、本格的に板前の道を歩み出した。28歳のとき、独立を見据えて帰郷。鎌倉小町通りに面した飲食店に、店長兼板前として迎えられる。豆腐販売店を各地で展開していたチェーンの本店に併設された和食店だった。

 引き継いだ店は売り上げが伸び悩んでおり、社長から「豆腐を使った大衆受けするメニュー開発を」というミッションを課せられた。「もともと工場で生産された製品を使った料理を含めての懐石料理店だったとはいえ、さすがに驚いた」と言う。

 ちょうど結婚を控えていた田所さん。「とにかく売り上げ向上のためにやるしかないと取り組んだ」と当時を振り返る。日本人が大好きなラーメンやカレー、パスタなどの候補の中から、豆腐と相性が良さそうなハンバーグを選んだ。「一度も作ったことが無かったけれど」と笑う。

 豆腐をメインに、牛肉ではなく鶏肉を使うことで、想像以上のふわふわな食感が生まれた。「洋食の経験が一切無かったことが返って良かったのでは」と田所さん。「鎌倉バーグ」と命名しメニューに加えるとヘルシーさも手伝って女性に受け、行列ができるほどで、業績は回復していった。

 ところがこのときすでに経営は破綻しており、しばらくして職を失ってしまう。「転職か独立か迷ったが、現在の店舗と巡り合ったのを機に」自分の店を持つことに決めた。

 人気メニューになっていた「鎌倉バーグ」を引っ提げてオープンしたものの、駅西口の人通りの少ない道沿いということもあり、来店客がゼロの日もあったという。苦しい日が続いていたが、ある日アポなしでテレビの取材班が飛び込んできた。美食家がランク付けする番組で、高得点を獲得したことで火がつき、ようやく経営が軌道に乗った。

 この間にも「鎌倉バーグ」は進化を続ける。コショウをさんしょうに変えると、より和の味わいが際立つようになった。修学旅行で来店した学生の一人が卵アレルギーで食べられなかったのを見て、より多くの人に安心してもらえるようにと、豆乳で試作を繰り返すと「ずっと求めていたまろやかさが出た」と言う。

 オープンから7年が経過したこの春、コロナ禍で売り上げは激減した。ランチはテークアウトで何とかしのいだが、夜はグループでの予約のみに限定し、いったん扉を閉めることに。

 今回のだし巻き卵は、夜の営業で一番人気だった料理でもある。だしをたっぷり使う京都独特のスタイルで、「長年、調理をしていると、考え方が引き算になる。これも引いて引いて引いてたどり着いた味と食感」だと胸を張る。巻いた後、湯気が上がる卵焼きの上にシラスとネギを載せ、客の目の前で完成させる。

 1日20本限定で、1本800円。当初テークアウトのみを想定していたが、常連客からの要望もありイートイン(ドリンク制1,000円)も用意する。1本作るのに5分程度掛かり、「できたてを提供したいので、鎌倉バーグ同様、お待ちいただく前提で来店を」と田所さん。「料理人としての原点に立ち返り、新たに専門店として挑む。ここでしか味わえないふわふわを体験いただければ」と呼び掛ける。

 愛用していた卵焼き用の鍋を、新品に買い換えた。「なじませるために試行錯誤しているところ」で、「オープン時には最高の状態で提供したい」と目を輝かせる。

 店舗面積は約43平方メートル。席数は22席(テーブル12席、カウンター10席)。

 営業時間は17時~19時。土曜・日曜・祝日のみ営業。売り切れ次第閉店。宴会などが入った場合は休むため、当日の電話(0467-61-0680)予約のみ受け付ける。

 豆腐ハンバーグ専門店としての営業時間は11時~17時。売り切れ次第閉店。火曜定休。

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