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ロシア、ウクライナ、日本の女性アーティストが鎌倉MUJI.comで「フレッシュスタート」展

オープン前夜、展示の設営をするメンバー。左から江戸さん、ユリアさん、ユーリアさん、オルガさん

オープン前夜、展示の設営をするメンバー。左から江戸さん、ユリアさん、ユーリアさん、オルガさん

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 MUJI.com鎌倉メトロポリタンホテル店(鎌倉市小町1)で3月29日、外国人アーティストのユニット「72STEP PROJECT」による展示「FRESH START(フレッシュスタート)」が始まり、見慣れない展示に来店客などが足を止めている。

掛け軸のように会場に下げた写真やイラスト、書のタペストリー

 同プロジェクトは、ロシア出身の写真家ユーリア・スコゴレワさんとデザイナーのオルガ・ゲラシムさん、ウクライナ出身の人形作家のユリア・ズビャイロワさんが東京を拠点に活動するユニット。

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 「72STEP」は、1年を72に分けて季節を表す「七十二候(しちじゅうにこう)」の英語訳。「二十四節気(にじゅうしせっき)」は考案された古代中国のものが使われているのに対し、それをさらに3つに分けた「七十二候」は日本の気候風土に合わせ改定されているという。「七十二候」に敬意を表し、自然の中から生まれた昔ながらの習慣や行事などをアートで表現したいとスタートした。

 第1回は、2019(令和1)年の東京原宿での展示。ユーリアさんは「たまたま訪れた神奈川県海老名市の田んぼで、鮮やかな色のこいのぼりがたくさん空を泳いでいて、まるでダンスのように見えた。後日ダンサーを連れて行き、そこで踊ってもらい、私は写真を撮り、オルガさんはイラストを描き、それらを中心に展示したのが始まり」と話す。

 ユーリアさんは2011(平成23)年に来日。日本の写真専門学校で学びながら、もともと好きで撮影していたバレエやダンスに本格的に向き合うようになる。2年ほど前、「相撲の所作、茶道や華道、書道、陶芸といった日本の伝統芸術の動きの中に、ダンスを発見した」と目を輝かせる。

 表参道で開かれていた「踊る、踊る、踊る」というイベントを訪れると、日本舞踊の隣で、筆で文字を書くパフォーマンスが始まった。「書道のシーンを撮影したいと思っていた」タイミングでの出合いに感謝し、迷わず声を掛けたという。

 会場で筆を踊らせていたのは、鎌倉在住の書道家・江戸裕美さんだった。ユーリアさんは「筆で書く文字の美しさは理解していたつもりだったが、江戸さんに会って、文字の見方が変わった」と振り返る。「意味や背景まで分かりやすく教えてくれたのは江戸さんが初めて」だった。

 オルガさんも「デザインというよりハイレベルのアート。文字からエナジーが伝わってくる」と書道がますます好きなる一方、書道人口が減っている事実を知り「日本の伝統を支えるために、新しい視点で一緒にプレゼンテーションできないか」と考えた。

 早速メンバーと江戸さんは城ヶ島(神奈川県三浦市)の海岸に出掛け、江戸さんが筆を振るうシーンを撮影した。日本人では思いつかない発想に、パフォーマンスする江戸さん自身も高揚したという。

 昨年4月、鎌倉に無印良品の店舗「MUJI.com」がオープンした。イベントスペースが併設されているという情報を入手した江戸さんが、同店にアプローチする。

 企画の意図を聞いたり、過去の展示の様子を見せてもらったりした同店の永尾亮店長は「僕らさえ今は意識しないような日本ならではの季節感を、外国の方たちが表現するところに興味が湧いた」と言う。

 すぐに同ユニットにとっての第2回の展示が決まったが、コロナ禍になり、密を避けるためイベントスペースは使えなくなった。「少し落ち着いたらやることになっていたが、第2波が来るなど何度も延期となり、季節は巡ってまた春が来た」とユーリアさんは笑う。

 ようやく実現にこぎつけた今回の展示は、春らしく「フレッシュスタート」をテーマにした。新年度のスタートと人生のほろ苦い味をイメージして、レモンをモチーフに。ユーリアさんが好きだという梶井基次郎(かじいもとじろう)の短編小説「檸檬(レモン)」は、落ち込んでいた主人公が、歩いている途中の店先で見つけたレモンに幸せを感じていくストーリー。「コロナ禍でやりきれない毎日だが、周囲に目を配り、何かを見つけてインスピレーションを受け、幸せになるきっかけになれば」とメッセージを込めた。 

 会場は「木が使われていて、自然の温かみがあり居心地がいい」とメンバーらはお気に入りの様子。「ただ一般的なギャラリーと異なり、ほとんど壁がないため大きなチャレンジでもあった」とユーリアさん。「何度もこの空間の前に立っては、みんなでアイデアを出し合った」と振り返る。

 天井の梁(はり)を生かして、写真のプリントやイラストを描いたタペストリー、筆で書いた小説の一節などを天井からつるした。写真は、城ヶ島での江戸さんが躍動するシーンを切り取ったもの。

 窓際には、オルガさんがデザインしユリアさんがワイヤーで形作ったレモンが並び、下におみくじがぶら下がっている。500円以上で購入し、おみくじ部分の紙をめくると、江戸さんが筆で書いたひらがな一文字が現れる。横に置かれたボードから、文字を見つける仕掛け。江戸さんは「ボードには、その文字から始まるワードがいくつか書いてある。文字の色と共に、これからの日々のヒントにしていただければ」と話す。

 2月15日から1カ月間、同店内に筆とカード、ボックスを用意し、来店客に「2021の1文字」をテーマに書いてもらった。200枚集まればと考えていたところ、519枚も投函された。「並べ方に悩むことになった」とうれしい悲鳴を上げながら、わずかな壁面を使って展示した。

 「展示ではあるが、来場者には一緒に参加している感じを味わってほしい」とオルガさん。ユリアさんも「細かいところにサプライズを仕込んでいる」と笑顔を見せる。

 3人は東京在住だが、「時間の流れがゆっくり」「歩いているだけで歴史を感じる」「私たちがまだ知らない伝統的なものに出合えそう」と鎌倉が好きになり、引っ越して来たいというメンバーも。「展示を通して鎌倉の人たちがインスピレーションを受け取り、よりパッピーになってもらえたら」と口をそろえる。

 営業時間は10時~19時。入場無料。混雑状況により入店できない場合がある。4月18日まで。

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