「鎌倉ファミリーマルシェ」が5月26日に2周年を迎え、3年目のスタートを切った。
乳幼児を抱えた生活で孤立しがちな母親や家族らが気軽に交流できる場を作ろうと始まった同マルシェ。マルシェを主催する「HAPPY LIFE in Kamakura(ハッピーライフ イン カマクラ)」代表のますおかひよりさんは「『あったらいいな』という発想で、初めて参加してくれる人や出店してくれる人の『あったらいいな』を形にしてきた2年だった」と振り返る。
2018(平成30)年3月、生後1ヶ月の第2子を抱えながら都内から鎌倉に転居してきたますおかさん。生活し始めると、住んでいた杉並区の子育て環境とのギャップを感じたという。「例えば、杉並には徒歩圏内に行政が運営する児童館が5~6カ所あり、イベントも盛んで、親子で気軽に出掛けるきっかけがたくさんあり友人もどんどん増えていった」という。
「鎌倉には施設やイベントが少なく、民間のイベントを探してようやく出掛けるのが精一杯。自然環境には恵まれているのに、このままでは子育てが『孤育て』になってしまう。同じ思いのママがたくさんいるはず。自分から発信して何らかの形にできないか」と危機感を抱いたますおかさん。知り合いの紹介で由比ガ浜通りに面したカフェと共同で軒先での小さなマルシェを開いたり、アパレルショップ内でカフェスペースを運営したりするうちに、「鎌倉には子ども連れの母親や家族が出会える場づくりが必要。たくさんの人に元気や笑顔をプレゼントしたいという思いが日に日に高まっていった」と話す。
2019年4月、「朝食を提供する仕事ができる人を探している」という話を聞いて出掛けたのが、「ソンべカフェ」(鎌倉市御成町)。幼い子供を抱えての仕事は難しいことが分かり仕事はあきらめたが、店主の宇治香さんに思いが伝わり、カフェの店内やテラス全体を使って開くマルシェの提案を受けた。「鎌倉駅のプラットホームからも見えるロケーションで、親子連れたちでにぎわう様子が想像できた」(ますおかさん)という。
思いを抱えたまま準備を始め、チラシを作って市内の子育て支援センターに置いてもらい、離乳食やキッズメニューを置いてくれる出店者にも声を掛けたところ、1カ月余りで第1回の開催にこぎ着けた。ますおかさんは「出店者数こそ少なかったが来場者数は想像以上で、こうした場を求めている人がたくさんいたことを実感できた」と笑顔で話す。
その後も同マルシェを毎月最終水曜に開き、丸2年が過ぎた。「毎回、出店者や来場者のたくさんの笑顔や輝く姿を見ることができ、自分も元気をもらっている。出店者の中には、実店舗をオープンした人もいるなど、人と人がつながり、笑顔が広がっていってうれしい」とますおかさん。「会場では毎回、『ありがとう』や『出会えてよかった』という言葉をよく聞く」とも。
ますおかさんは、集まる人の声に耳を傾け、音楽ライブ、バレエやタップダンスのワークショップ、ヨガ教室、物々交換会や地域通貨の導入などのアイデアを一つ一つ形にしてきたといい、作り手や売り手の顔がよく見える「エシカルマーケット」を目指すという方向性も「見えてきた」と喜ぶ。昨秋には、子どもを預かったり見守りスペースに集めたりすることで、大人だけの時間を味わってもらう「ナイトマーケット」も開いた。参加した人の中には、「出産してから今日がいちばん幸せだった」と涙を浮かべる人もいたという。
現在、同マルシェは、子育て世代だけでなく老若男女が思い思いの時間を過ごす場所になっている。ますおかさんは「出会った人たちと話して、みんなの『あったらいいな』という理想の空間づくりを進めてきたが、今後はこの経験を街づくりにもつなげていきたい」と話し、「まずは気軽に遊びに来て。そして皆さんの『あったらいいな』も聞かせてほしい」と呼び掛ける。
次回の開催日は6月23日。開催時間は10時30分~16時。