鎌倉幕府に関わった19人の女性をつづった新刊「女たちの鎌倉幕府~19人の女性と北条義時を描く」が1月27日、出版された。
著者の浅田さん。発行所の「かまくら駅前蔵書室」で講座も開いている
著者は、元新聞記者で歴史研究家の浅田勁さんで、2020年10月から20回にわたり神奈川新聞日曜版に連載した「女たちの鎌倉幕府」に加筆してまとめた。書籍化は、浅田さんがメンバーになっている会員制図書室「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町)で、浅田さんが「連載中には、掲載日が楽しみ、スクラップしている、本にならないのかなどの声が新聞社に寄せられている」と話したことをきっかけに同図書室が協力を申し出て実現した。
同書には、19人の女性が登場。源義経の母の常盤、伊豆配流中の源頼朝を支援し続けた比企尼、頼朝の妻の北条政子、頼朝の愛人の亀前、源氏方の捕虜となった平重衡の世話をした千手前、静の舞で知られる静御前、梶原景時の失脚に関わった政子の妹の阿波局、頼家の妻の若狭局、畠山重忠討伐を説いた牧の方、女婿の一条実雅を将軍に擁立しようと謀った伊賀局、北条氏との架け橋役を務めた矢部禅尼、「とはずがたり」の著者・二条らを描く。
浅田さんは「鎌倉時代といえば、これまで男たちの激しい権力争いが描かれることが多かったが、この時代の女性たちがどう生きたのかに視点を置いた。政治に積極的に関わることで翻弄(ほんろう)されてしまったり、奔放な宮廷生活を送ったりするなど、この時代にさまざまな生き方の女性がいたことを知ってほしい。特に義時の頃は、政子のほか、阿波の局、若狭局、牧の方が政治に影響を与えた女性が多かった」と説明する。
発行日の1月27日は、1219(建保7)年に源実朝が鶴岡八幡宮境内でおいの公暁に暗殺された日。「たまたまその日になっただけ」と浅田さん。「義時が直前に太刀持ちの役目を譲って自邸に戻り難を逃れた日であり、その後の幕府や登場人物の運命が変わっていった日でもある」と話す。
浅田さんは「大河ドラマを意識していないといえば嘘になるが、あくまでも史実に基づいて描いた。武家政権が始まった鎌倉時代の女性に興味を持ったり、ゆかりの地を訪ねるきっかけになればうれしい。ドラマに登場する女性らの人物像を読み解くハンドブックとしても使ってほしい」と話す。
同書は四六版119ページ。価格は1,650円。同図書室のほか、市内の島森書店、たらば書房などで購入できる。