「鎌倉ウィンメルブック展」が11月1日、MUJIcomホテルメトロポリタン鎌倉店(鎌倉市小町1)で始まる。
文章のない絵本「ウィンメルブック」の鎌倉版を通して人と街をつなげようという同イベント。ドイツ語圏の国では、すでに一つのジャンルとして定着しているというウィンメルブックには文章がなく主人公がいないため、ストーリーは読み手に委ねられるという。
同展を主催する「Seno Atelier(セノアトリエ)」の妹尾和乃さんがウィンメルブックに出合ったのは、スイス在住時代に家族で出かけた動物園のショップといい、「さっきまで歩いた動物園が描かれていて、その後も家族でずっと楽しめた」と振り返る。帰国し住むことになった鎌倉が舞台の「鎌倉ウィンメルブック」を7月に出版した。
同書がメディアで取り上げられると、たくさんの人から声をかけられたという妹尾さんは「一冊の絵本からさまざまなつながりが生まれた」と話す。絵本の表紙に描いた若宮大路にも面する会場のMUJIcomを紹介してもらえたといい、「表に出れば、そこが絵本の世界。スイスで動物園と絵本がくれたのと同じ体験を皆さんにも提供できれば」と話す。
同展のテーマは「人と、街が、絵本でつながる」。メインの展示は、天地1メートル70センチ、左右2メートル62センチのタペストリー4枚で、同書の舞台になっている8カ所のうち、若宮大路、由比ケ浜、長谷、大船のページを拡大した。「絵本はのぞき込むイメージだが、大きな絵なので自分が絵の中に飛び込んで主人公になれるはず」と妹尾さん。キャラクターを消して街並みのみを残した大船のタペストリーには、来場者が自由に人物などを描き込めるようにした。
同書の制作工程や登場するキャラクターなどを紹介するコーナーのほか、海外のウィンメルブックに触れて見ることができるコーナーや80種類の一筆箋と18種類の封筒から1枚ずつ選んで受け取る人を想像しながら鎌倉で働く人や店宛に手紙を書いてもらうコーナーも用意。絵本の場面を見ながら正解を探してもらうクイズラリーも行う。
有料のプログラムも提供。同書の試し刷り校正紙を使ったマスクケース作り、自分の街を組み立てる工作教室、同書の場面を使ってAI翻訳アプリで外国人に鎌倉を紹介する体験、オリジナル缶バッジ作り、コピーライティング講座、同書の出版元「1ミリ」の古谷聡さんと東湘印版の石川智隆さんによる紙選びや印刷、製本にまつわるエピソードを紹介するトークセッションなどを用意する。
妹尾さんは「リアルと絵を行ったり来たりして楽しめるのもウィンメルブックの面白さ。鎌倉版には、暮らす人も観光客も、すぐに行くことがができる市内の様子を描いている。当展で絵本の世界を体感した人には、ぜひ街に出て楽しい時間を過ごしてもらいたい」と話す。
開催時間は10時~19時。入場無料。有料プログラムの一部は予約制。7日まで。