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地域をつなぐシャッターアート 江ノ電が通りを走る鎌倉腰越商店街で

かおかおパンダさんが筆を入れている背後を江ノ電の車両が通過する

かおかおパンダさんが筆を入れている背後を江ノ電の車両が通過する

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 アートによる鎌倉腰越商店街の活性化を目指す「腰越アートストリートプロジェクト」第1弾の空き店舗のシャッターペイントが11月11日、完成した。

江ノ電の大木さん、チーム腰越の中嶋さんとかおかおさん(左から)

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 江ノ電(江ノ島電鉄)の車両が路面電車のように通りの中央を走ることで知られる同商店街。代替わりなどのタイミングで廃業しシャッターが閉まったままの商店が目立つ。街ににぎわいを取り戻そうと、江ノ電、チーム腰越、腰越協栄会が実行委員会を組んで立ち上げたのが同プロジェクトだ。

 ペイントするキャンバスとなったのは、かつて青果店だった「タナベストア」のシャッター4枚分で、幅約8.6メートル、天地約2.5メートル。これまでにも1階に卓球台を置いて地域に開放したり、年末には歳末福引の会場に提供したりしている元店主が、快く提供してくれたという。

 この日、ペンキが付着したオーバーオール姿で仕上げの筆入れをしたイラストレーターのかおかおパンダさんは、チーム腰越の一員。「以前から『閉まっているシャッターを明るくできたらいいよね』とメンバーで雑談していたが、こんなに早く実現するとは思わなかった」と振り返る。

 きっかけは、江ノ電地域共創担当の大木伸樹さんからの相談だった。「地元を活性化するためのアイデアの一つとして、社内で出たのがシャッターペイント。度々連携してもらっていたチーム腰越の皆さんに3月ごろに声をかけた」と大木さん。チーム腰越の中嶋寿子さんは「『キター』と思わずガッツポーズしてしまった」と笑顔で話す。

 チーム腰越は、これまでにも「腰越街歩きマップ」「腰越御朱印帳」などの制作、「おもちゃ花火大会」「腰越ハロウイーン」など地域イベントを行ってきた地元有志による団体。「いつも何かやろうとすると、地元のつながりでトントン拍子に事が運ぶことが多い」と話す中嶋さんだが、「今回も試し描きのためにどうしても必要だったシャッターの現物が、あるコミュニティースペースで、たまたま目の前に座っていた女性を介して奇跡的に手に入った」と話す。

 夏にシャッターが届き、凸凹のある表面を確認し、巻き上げを想定しながら試し描きをした。9月末のシャッターの洗浄、10月の下塗りには、学生や地域の人たちも加わった。そこに、かおかおパンダさんが「漁師町の腰越のイメージで、船、海、太陽、そして江ノ電をデザインした」という下絵を描き、11月は地元の幼稚園生や協栄会のメンバーが色を塗ったり、思い思いに笑顔マークを描いたりした。

 「子どもも大人もシャッターに描くのは初めての体験で、みんな楽しいと大喜び。描いている人にも、絵にも笑顔がいっぱいになった」とかおかおパンダさん。一人で描いているときも通りかかった地元の人が筆を入れることもあり、延べ100人以上が参加したという。

 この日も、声をかける人や差し入れを手渡す人などが多く、笑顔での交流が絶えなかった。午後には松尾崇鎌倉市長も筆を入れる場面も。最後に、かおかおパンダさんが大きな太陽に笑顔を描き、サインして完成した。

 協栄会副会長の石井章嗣さんは「閉まったままのシャッターが増えて寂しいが、そのシャッターを活用して、地元を愛する人たちがみんなでやってくれたのがうれしい」と話し、大木さんは「この実績をモデルに、2軒目、3軒目と増えていけば」と期待する。

 中嶋さんは「絵だけでなく音楽や映画などで人をつなげながら、腰越の温かさを伝えたいという思いを込めて『アートストリートプロジェクト』と名付けた。今回のシャッターアートは、その始まり。江ノ電の車窓から見るだけでなく、下車して腰越の街を歩きながら楽しんでほしい」と話す。

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