独自の画法で水彩画の描き方をレクチャーする鎌倉水彩画塾(鎌倉市小町)が8月26日、大船から鎌倉駅近くに移転し教室を再開した。
明るく広くなった部屋にさまざまな年齢層の塾生が集う。プロを目指しテニススクールに通っていた小学生がスクールをやめ、「ここで学んで将来は水彩画家になる」と夢を語った
鎌倉生まれの水彩画家・矢野元晴さんが2017年5月に大船駅近くで開いた画塾。「塾生が80人になり手狭になったことと逗子・葉山から通う方も多かったことから、よりアクセスしやすい鎌倉駅近くで物件を探した」と矢野さん。今年6月、以前より広い物件が見つかり移転を決めた。「大船は鎌倉市だが、実は画塾の住所は横浜市栄区だった。これで名実ともに鎌倉になった」と笑う。
移転先は鎌倉駅から東に徒歩5分ほどの小町大路沿い。建物の角部屋で採光が良く、塾生にも好評だという。「外に出ればスケッチに最適な風景がいくらでもあるロケーション。これからは塾生と屋外にも出ていきたい」と抱負を話す。
矢野さんは1988(昭和63)年生まれで、日大芸術学部デザイン科卒業。建築デザイン事務所に就職したが画家になりたいという夢を捨て切れず、水彩画家の笠井一男さんと出会ったのを機に退職。夜勤のアルバイトをしながら本格的に水彩画に取り組み始めた。
2016年に会員制図書室「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町)の会員となり、「画家として日本に水彩画を広げていきたい」という夢を語ったことがきっかけで、同所でワークショップを開くことになった。
タイトルは「2時間半で作品が描ける水彩画ワークショップ」。矢野さんが撮影した写真を見ながら5つのステップで描き進める。1ステップごとに矢野さんのデモンストレーションを見てから参加者が同様に描いていく。まねて描くが、完成すると一人一人の個性が出るのが特徴。
「少しずつ進むので分かりやすい」「絵心がなかったはずなのに、それなりに描けて感動した」「毎回作品を持ち帰ることができるのがうれしい」「油絵だと道具代も高いし時間が掛かるが、水彩は手軽に挑戦できる」といった感想が寄せられ、回を重ねるごとに参加者が増えていった。
一方で「先生のダイナミックな描き方に毎回驚かされる」「水の使い方が魔法のよう」など画法に魅了される声も多かった。「ますますデジタル化が進む世の中だからこそ、アナログな体験、ライブ感が受けるのではないか」と分析する矢野さん。「画法を本格的に学びたい」という要望も多くなったことから、同画塾を開設した。
塾生は1年で70人になり、移転した現在は100人に迫る勢い。小学生から80代までが通い、7割が女性だという。「『画塾に通うようになって元気になった』『画塾で人と会話するのが楽しい』と言ってくださる方も多い。水彩画が芸術面だけでなく、人と人とのコミュニケーションツールになっているのがうれしい」という。
矢野さんが生み出した表現手法を自ら「水彩印象画法」と名付けると、書籍の表紙や観光ポスターに採用されたほか、各地の団体から講座開催を依頼されるなど次第に知名度も上がっている。
矢野さんは「海外の大学にはある水彩学科が日本には一つもない。水彩画を楽しむ人を増やして日本での水彩画の地位を少しでも向上させていきたい。水彩画の面白さを鎌倉から発信していければ」と話す。
9月26日10時~12時30分、若宮大路沿いの大路ビル3階で手ぶらで参加できる体験ワークショップを開く。定員は20人(先着順)。ワークショップ申し込みや入塾の問い合わせは電話(080-6578-9290)で矢野さんまで。