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路傍の石仏にもフォーカス 撮影歴25年の集大成「鎌倉の石仏」写真集出版

谷戸にある龍宝寺(鎌倉市植木)境内には多くの石仏が並ぶ。頬に手を当て優しい表情の石仏を表紙に使った

谷戸にある龍宝寺(鎌倉市植木)境内には多くの石仏が並ぶ。頬に手を当て優しい表情の石仏を表紙に使った

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 銀の鈴社(鎌倉市佐助1)から8月15日、市内の寺院や山道などに立つ石仏を撮った「大箭晃義(おおやてるよし)写真集『苔に光る 鎌倉の石仏』」が発刊された。

写真集を手にする大箭さん。撮影のほか、書店や公共施設、学校などを回ってアピールしている

 鎌倉には4000体以上あるといわれる石仏。「寺院などで人目に付く石仏だけでなく、山を垂直に切り崩した『切岸(きりぎし)」』や斜面を掘った『やぐら』にひっそりとたたずんでいる鎌倉ならではの石仏にもフォーカスした」と話すのは、同書の著者で写真家の大箭さん(藤沢市在住)。「そこには四季折々の花があり、コケがあり、石仏はどれも良い顔をしていた」と続ける。

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 大箭さんが石仏を撮り始めたのは25歳の頃。ふらりと訪れた材木座の実相寺境内で、こけむした如来像と真っ白なドクダミの花との対比に目を奪われた。「ほのぼのとしてひなびた田舎にいるようで、観光地とは思えない光景だった」と振り返る。以降、鎌倉の自然や生き物などあらゆる被写体を撮り続けているが、「石仏に限っては市内と周辺のほとんどを撮ったはず」と笑う。

 「表情は一体一体異なり、同じ石仏でもちょっとしたアングルの違いで微妙に変化する。特に淡い光が当たっているときの表情に引かれる。いくら撮っても尽きない」と撮影を続けてきた。

 3年前、50歳になったのを機に会社員生活に区切りを付け写真家として独立することに。今年3月に作品を銀の鈴社(鎌倉市佐助)に送ると、トントン拍子に書籍化の話が進んだ。

 掲載する写真が決まると許可をもらうために自ら寺社を回った。九品寺(鎌倉市材木座)では門前に立つ東日本大震災の供養のために立てられた地蔵の写真が対象だった。「石仏は何百年も人々が気持ちを込めて手を合わせるから、その気持ちが入りだんだんいい顔になっていくもの。まだ新しいこの石仏もやがてそうなっていく」という住職の言葉が忘れられないという。

 写真集としては異例ともいえる小型にしたのは「散策するときにリュックなどに入れて持ち歩いてほしいから」。同書に登場する石仏がある寺社などを記した地図も掲載した。

 大箭さんは「とても誠実なスタッフばかりの出版社と巡り合えて満足のいく本ができた。この本を手に鎌倉の石仏巡りをして、心を豊かにしていただければ」と話す。

 四六版178ページ、オールカラー、定価2,000円(税別)。鎌倉・藤沢市内の書店をはじめ全国の書店、力餅屋(鎌倉市長谷)でも購入できる。

 10月20日に銀の鈴社で開かれる「第38回かまくら学府定例会」で大箭さんが講演する。午前・午後の2部制で定員は各回20人。参加費は2,000円(同書付き)。事前申し込み先は電話(0467-61-1930)西野さんまで。