鎌倉若宮大路沿いの「鎌倉ギャラリー」(鎌倉市小町2)で3月16日、鎌倉在住の映画監督・山崎達璽(たつじ)さんの作品「宮城野」の上映とトークセッションが行われる。
毬谷友子さんと片岡愛之助さんが見つめ合うシーン。歌舞伎好きだった山崎監督画オファーした片岡さんはその後、テレビドラマでブレークする
「自分が暮らしている鎌倉で、自分が撮った映画をずっと上映したかった」と話す山崎さん。約10年前の作品だが、念願かなったのは昨年8月。定員15人の「かまくら駅前蔵書室」(鎌倉市小町1)で、2日連続で上映した。「2日とも満席だったので、もっと広い場所で多くの人に見てもらおうと企画した」のが今回のイベント。
山崎さんは1998年、日大芸術学部映画学科の卒業作品「夢二人形」をフランスの新人映画祭に出品し、1人で渡仏。上映後、外国人男性から「カンヌに来なさい」と声を掛けられたという。「冗談か、詐欺だろうと気にも留めていなかったが、ある日カンヌから招待状が届き驚いた」と振り返る。
同作品は翌年、「第52回カンヌ国際映画祭」シネフォンダシオン部門でオープニング上映され注目を集めた。これがきっかけで映画製作のオファーが届き、「宮城野」のメガホンを取り商業映画デビューとなった。
「宮城野」は矢代静一作の戯曲を元に、浮世絵師の写楽にまつわるミステリー仕立ての作品で、2008年に公開。矢代さんの娘で舞台女優の毬谷友子さんがヒロインを務め、ブレーク前だった歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが主演している。
同作で存在感を放っていたのが女郎屋のおかみ役で、昨年9月に亡くなった樹木希林さん。山崎さんは「オファーを受けてもらった経緯から、初対面や撮影時、プライベートでお会いした思い出など何時間でも語れるエピソードがある」と笑う。今回は、上映後に俳優の島隆一さんを聞き手に、同作にまつわるトークセッションも行う。
上映のプレイベントとして、かまくら駅前蔵書室で同4日~17日、劇中で実際に使った浮世絵の1色ずつすり重ねた過程の版画13枚や、美術の池谷仙克さん制作のペーパークラフト「立版古(たてばんこ)」を展示。9日夜には「夢二人形」上映と監督トークを予定する。
山崎さんは「謎の多い写楽という存在はロマンやミステリーとなってさまざまな作品や豊かなアートを生み出してきた。来年の没後200年に向けて今回のイベント全体を『しゃらく・さい』と名付けた」と話し、「大好きな鎌倉でまたできるのが楽しみ。映画もDVDやネット配信が主流になりつつあるが、大きな画面でたくさんの人と共有する豊かでぜいたくな時間を楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。「見た人に委ねる結末になっているが、実際には正解を想定して撮影している。今回はそれも披露するつもり」とも。
開催時間は、1回目=14時~17時(開場13時30分)、2回目=18時~20時(開場17時30分)。入場料2,500円(特製コースター、ポストカード付き)。
かまくら駅前蔵書室での展示は13時~20時、入場無料。映画とトークは18時30分~20時(開場18時)、入場料1,000円。
チケットはホームページで予約できるほか、鎌倉駅東口の松林堂書店やかまくら駅前蔵書室でも購入できる。