鎌倉小町通りで12月21日・22日、食べ歩きなどで出るごみ対策として「おもてなし袋」を無料配布した。用意したのは鎌倉小町商店会。
鎌倉小町商店会が作った「おもてなし袋」は耐水性も備えているので、スナックの残りなどにも対応
「かつては地元の人が地元の人向けに商売をする、どこにでもある商店街だった」と話すのは、商店会長の高橋令和(のりかず)さん。小町通りは、鎌倉駅東口ロータリーから鶴岡八幡宮方面に向かう約360メートルの道に、飲食店や土産店など250店以上が軒を連ねる。「すっかり観光地化し、最近は食べ歩きの通りになってしまった。商店会でも以前からごみ対策を進めてきた」と続ける。
年間2000万人近い観光客が訪れ、オーバーツーリズムが問題視される鎌倉。今年4月1日には、ごみのポイ捨てをはじめ観光客などに迷惑行為の自粛を促す「鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例」が施行された。同商店会でものぼりやポスター掲示のほか、「おもてなしマップ」を作成配布するなど呼び掛けたが、効果は実感できていないという。
「ごみ袋」配布の企画も5~6年前から始まっていたが、市外から出店するテークアウト専門の飲食店が多く、商店会にも加盟しないケースが大半なため、会員からも「受益者負担が原則」という意見もあり、足並みがそろわなかった。
「それでも何か対策をしなければ」と今年になって企画を具体化し、「おもてなし袋」が出来上がった。当初、ポリ袋を想定していたが、市が昨年「プラごみゼロ宣言」をしたこともあり、素材を紙に変更。「ごみ袋自体がごみになる可能性があるため、委員会でアイデアを出し合ってもらい、たどり着いたのが『持ち帰りたくなるような袋』」だった。
ネーミングには「『ごみ』という言葉は使わないでほしい」とだけリクエストしたという高橋さん。出来上がってきた「おもてなし袋」に、「お土産など商品を入れてもおかしくないほど上質な仕上がり」と笑顔を見せる。
A4サイズで、表面には「おもてなし袋」と「鎌倉の思い出はごみと一緒に持ち帰りましょう」の文字を、裏面にはごみの投げ捨てやグループで立ち止まっての飲食の抑止などを呼び掛ける「小町商店会からのお願い」を、日本語と英語で記載した。
食べ残しなどを入れても破れないよう表裏とも耐水加工し、5000枚作成。「1枚85円も掛かってしまった」と嘆くが、一部を神奈川県の「商店街魅力アップ事業」の補助を受け賄った。
当日は会員や鎌倉学園高校の生徒、一般ボランティアなど10人以上が集まり、10時前から夕方まで3カ所に分かれて観光客に配布した。
同校1年でボランティア部に所属する志水恒太さんは「こんなにたくさんの人が通る道でのボランティアは初めて。でも、こうしたツールがあると、渡す側も受け取る側も分かりやすくていい。誰もが気持ち良く過ごせる町になれば」と話し、食べ歩く人を中心に手渡していた。
「新聞で見て気になっていた」と言う近所に住む女性は、「家の前に毎日のようにごみが捨てられ困っている。この袋なら持ち帰ってもらえるかもしれない」と期待を寄せた。
高橋さんは「配布で終わりでなく、むしろスタート。今後に生かせるようにアンケートも取っているので、結果が楽しみ。3年継続事業なので、来年は日本語や英語に加え、中国語も入れたい」と話す。