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鎌倉でフィルムコミッション設立 小津作品の名プロデューサーも一役

鎌倉文学館の前庭で、山内静夫さんを囲んでの記念撮影は笑顔があふれた(左から大森会長、中井さん、山内さん、松尾市長)

鎌倉文学館の前庭で、山内静夫さんを囲んでの記念撮影は笑顔があふれた(左から大森会長、中井さん、山内さん、松尾市長)

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 鎌倉文学館(鎌倉市長谷1)で7月16日、鎌倉市観光協会(鎌倉市御成町1)が立ち上げた鎌倉版フィルムコミッション「鎌倉ロケーションサービス」の記者会見とセレモニーが開かれた。

「文化の火を消すな」と立ち上がった山内さんのもとに駆け付けた中井さん。仲のいい親子の様にも映る

 神奈川県では16番目と後発ながら、年間2000万人近くが来訪する観光地鎌倉のフィルムコミッション(以下FC)設立の報に多くの報道陣が集まった。11時、前夜までの雨が上がり新緑が鮮やかな同館前庭には、ソーシャルディスタンスを保ち関係者4人が並んだ。

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 最初にあいさつに立った同観光協会の大森道明会長は「かつて大船には撮影所があり、子どもの頃は鎌倉駅周辺だけで映画館が5館もあった」と振り返り、「協会でも以前から議論してきたFCがようやく実現。コロナ禍でこれが鎌倉かというほど静かになってしまった観光の街を元気付け、発展させる一助になれば」と話した。

 3月31日に同協会との連携に関する協定を結んだ鎌倉市の松尾崇市長は「20年越しの懸案課題だったが、鎌倉を愛する人たちの熱い思いにより結実した。松竹の映画100周年ということで数々の名作の舞台になり、これから先も撮影は続いていく。100年後の人たちが見たときに、100年前の鎌倉はこんな所だったと分かるような取り組みができれば」と話し、「FCが鎌倉の文化を大いに発信し、価値をさらに高めていく役割を担うはず」と期待を寄せる。

 続いてあいさつしたのは、5月に設立しロケーションサービスの実務を担う「鎌倉映画学校」名誉顧問の山内静夫さん。松竹大船撮影所全盛期には、小津安二郎監督作品などのプロデューサーとして活躍し、現在も市内に在住している。

 コロナ禍の今だからこそ文化の火を消してはならないと、車椅子姿でこの日の会見に臨んだ山内さんは、「ずっと家に引きこもっていて、久しぶりに出てきたので照れくさい」と切り出した。

 「人がキャメラを向けない所に向けるのが映画の悪い癖。だから有名過ぎる鎌倉は映画には向かない。でも、隙間隙間にはいい所があり、僕は細い路地が好き。狙う所はたくさんあるのに、なかなか(映画に)結び付かないところもまた鎌倉らしい。鎌倉をかわいがり、愛していただき、話題に上れば幸せ」と話した。

 「僕は有名な所にカメラを向けてきた」と笑いを誘ったのは、鎌倉市国際観光親善大使の中井貴一さん。父で俳優だった佐田啓二に連れられ鎌倉に通い、子どもの頃から「親しい面白いおじさん」と慕う山内さんが、95歳という高齢を押しての出席を聞き駆け付けた。

 「鎌倉にFCがなかったのが不思議なくらい。FC設立は映画やドラマの現場の大きな手助けになり、気持ちにゆとりを持って撮影に臨めるので感謝している」と話す一方で、「鎌倉の皆さんは撮影に理解がある」というドラマ撮影時に体験したエピソードを披露。

 「片側通行にしてもらい撮影していると、観光で通り掛った車から『邪魔だよ』と声がした」が、守ってくれたのは地元住民だったという。「『うるさいわよ』と近所の方が言い返してくださった。これからもまたお世話になるのでよろしくお願いします」とほほ笑んだ。

 今後FCは活動を通して、会見の会場となった同館をはじめ、吉屋信子記念館など市が管理する歴史的建造物のほか、民間の古民家などを対象にロケ地として有効活用することで、文化施設の継承や新たな魅力の発信につなげていくという。

 鎌倉映画学校はFCに関わる実務のほか、映画関連のセミナー開催、映画関係者の育成、サポーター制度の構築などを行っていく。代表理事の木村吉貴さんは「現在は、クラウドファンディングやロケで使用できる施設のデータベース作成など準備を進めているところ。市民の理解を得て愛される団体を目指したい。鎌倉のまちの光景や市民の姿を、映画や映像を通じて未来に残す手伝いができたら」と抱負を話す。