LIFE DESIGN VILLAGE(藤沢市鵠沼)が、鎌倉を拠点とした農業プロジェクト「ニュー農マル」を立ち上げ、8月8日から運営資金を募るためのクラウドファンディングを始めた。
畑の除草作業中の河野さん。「畑に入って実際に手を動かさなければ、見えてこないことがたくさんある」
「コロナ禍でほとんどの仕事が無くなってしまい、以前から付き合いのあった農家で畑仕事の手伝いに通うようになったのがきっかけ」と話すのは河野竜二さん。自然と共存する暮らし方や働き方を体感するイベントの企画運営などを行う同団体の代表で、2018(平成30)年からは日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局長も務めている。
観光地や海などのイメージが強い鎌倉だが、「鎌倉野菜」に代表されるように農地も多い。「実際に畑に入ってみると、現場の高齢化、担い手不足、気候変動による収穫減など今の農業が抱えるさまざまな課題が見えてきた」と振り返る。
「そういった問題を農家さんに任せきりにするのではなく、地域の人々が主体的に農業に関わりながら、みんなでサポートしていく必要がある」と考え、調べてみると「海外には、消費者が定期的に作物を受け取ることができるCSA(地域支援型農業)という会員制度があり、農家に安定的にお金が落ちる仕組みがあった」と驚く。
そのCSAを目指す第一歩として「ニュー農マル」を立ち上げた。「単に野菜を育ててみようとか、窮地に立たされている農業を救おう」ではなく、いつでも新鮮で安心な食であふれるまちを、みんなでつくっていくことが目的だという。
プロジェクトに協力してくれたのは農地所有適格法人の「鎌倉リーフ」(鎌倉市関谷)。農作物の直売や飲食の提供する「かん太村」を運営し、イベント会場の提供や福祉施設との連携なども行っている。
同所や近隣の農家を舞台に、「ニュー農マル」で募った参加者に3つの体験を提供する。
1つ目は「援農」。農家が人手を必要とするときに、種や苗植え、収穫、出荷など日常的な作業を手伝うことで畑仕事のノウハウを身に付けていく。2つ目は、プロジェクトで借りた農園を自分たちで耕し、作物を栽培することでスキルを習得する「ニュー農園」。3つ目は、収穫した野菜や加工した物を「かん太村」で定期的に開かれるマルシェなどで売り出す「販売」。
河野さんは「農作業の手伝いからスタートし、畑を耕し、種をまき、育てて収穫して、場合によっては加工し、販売する。ここでなら、その全てを一貫して体験できる」と胸を張る。
課題は「持続可能なプロジェクトにしていくこと」で、その資金を募るクラウドファンディングを始めた。目標額は200万円で、農作業に必要な備品の購入費、会員受け入れのクラブハウス設置費、スタッフ人件費などに充てる。支援のリターンは、ステッカーやTシャツ、農作物や加工品などのほかに、プロカメラマンによる撮影付き農業体験、マルシェ出店権、専用軽トラックへのロゴ掲出などユニークなものも。
河野さんは「鎌倉や湘南を愛する仲間たちが立ち上げに参加してくれた。CSAのような仕組みがあれば、消費者も生産者も安心して食に向き合え、今回のようなコロナ禍も乗り越えていけるはず」と話す。鎌倉での活動がモデルとなり、日本各地で農業が抱えるさまざまな問題解決につながればと考えている。
8月初旬の「援農」に参加した都内在住者からは「ずっとリモートワークで運動不足だけでなく、人とのつながり、自然とのつながりが希薄になっていた。誰かのためになる行動で汗をかくことができ本当に気持ちよかった」と感想が寄せられたという。
「お金以外で人のために汗をかくこと、無心で土に触れることは、とにかく気持ちがいい。当たり前のように食卓に並ぶ野菜がどのように作られているのかを体感することで、毎日のご飯がよりおいしく感じる。まずは一度、農作業を一緒にやりましょう」と呼び掛ける。
クラウドファンディングの締め切りは、9月10日23時59分。