鎌倉の豆腐ハンバーグ専門店「鎌倉 六弥太（ろくやた）」（鎌倉市御成町）が5月21日、6時から開く「早朝食堂」として朝食の提供を始めた。

豆乳仕立ての豚汁定食にはご飯と小鉢が付く

　同店は2012（平成24）年創業。店舗面積は約43平方メートル。席数は22席（テーブル12席、カウンター10席）。京都の料亭などで経験を積んだ店主の田所裕基さんが考案した豆腐ハンバーグ「鎌倉バーグ」が人気といい、行列ができたり売り切れたりすることもあった。昨年4月の緊急事態宣言をきっかけに客数が激減。テークアウトでしのぎ、夏以降は客足が戻ってきたものの、夜の営業は以前ほど回復しなかった。

　「夜を何とかしようと、10月から土曜・日曜の17時～19時限定で始めた『出汁巻（だしま）き玉子専門店 鎌倉六弥太』は好調だった」と田所さん。「おかげさまで作るのが追いつかないこともあったが、鎌倉市も『まん防等重点措置』の対象区域になった4月12日以降は人通りが一気に減ってしまい、アルコール類も出せず、特に夜に関しては打つ手がなくなった」と振り返る。

　「残っているのは朝の時間帯だけ」（田所さん）になり、朝食の提供を視野に入れメニューを考えていたとき、浮かんだのが「深夜食堂」だった。安倍夜郎さんの漫画が原作で、ドラマ化や映画化もされ田所さんも大ファンだという。作品内の深夜食堂は、深夜0時にのれんを出し朝まで営業する架空の店。メニューは「豚汁定食600円」とアルコール類のみ。食材さえあれば、客の要望で店主が何でも調理するというスタイルを取っている。

　そこで田所さんは、作品内で「深夜食堂」が閉まる朝方の時間から「早朝食堂」として店を開けて、「豚汁定食」を引き継ぐ設定を思い付いた。豚汁の具は、豚肉、大根、にんじん、ささがきごぼう、こんにゃく。刻んだ小ねぎも乗せる。豆腐ハンバーグの専門店らしく豆乳で仕立てたところが「深夜食堂」とは大きく異なる。「味わいも深くなり、栄養たっぷりでヘルシーに仕上がった」という。大きな器に盛り付ける豚汁にしらすかちりめん山椒（さんしょう）をトッピングしたご飯と小鉢を付けて500円で提供する。

　「『深夜食堂』のマスターのように、何でも作るというわけにはいかない代わりに、朝食らしく『特製卵かけご飯定食』も用意」（田所さん）した。ご飯の上に生卵、ちりめん山椒や赤しば漬け、小ねぎを乗せ、自家製で甘口のだししょうゆを掛ける京風タイプ。豆乳の味噌汁と小鉢を付け、同じく500円。元は夜の人気メニューだったといい、朝メニューとして久しぶりに復活させることになった。

　「出勤前に寄って、さっと食べてもらえるように、どちらもすぐに出せるメニュー。しかもワンコインと手軽だが、調理に手は抜いていないし、栄養やバランスも考えている」と胸を張る田所さん。「深夜食堂は定食屋、うちは和食店のイメージの器とお盆でお出ししている」とも。

　ほとんど広報していないこともあり6時台の来店はまだ少ないものの、徐々ににぎわい始めている。23日に訪れた市内在住の女性らは「ボリュームもあっておいしく、お腹いっぱいで朝から幸せ」「自分では作れない味の豚汁」「朝食の選択肢が増えてありがたい」などと話していた。

　「今は何となくみんな元気がない状況。地元の人に少しでも元気になってもらえるようにと始めたが、早朝から頑張っているお客さまから反対に元気をもらっている」と笑う田所さん。「朝食ではなかなか利益が出ないものの、新たなつながりができたり、ランチでまた来店してもらったりするきっかけにもなれば」と期待を寄せる。

　朝食の営業時間は6時～8時30分（ラストオーダー）。豆腐ハンバーグ専門店としての営業時間は11時～16時（ラストオーダー）。火曜定休。