鎌倉在住のイラストレーター・かおかおパンダさんがデザインした湘南モノレールのラッピング車両が現在、同路線を運行している。
かおかおパンダさんは、札幌生まれのイラストレーターで、大好きなサーフィンをするために19年前、鎌倉に移住。鎌倉市営プールの壁画や江ノ電100周年記念企画の「看板アート」、自動車メーカーのプロジェクトでの車体ペイント、有名メーカーのチョコレート限定パッケージなども手掛けている。
同路線の車両デザインはほとんどが銀色に細いカラー帯。ラッピング車両には、白をベースにかおかおパンダさんが独特のタッチでカモメやペンギン、パンダ、ブタの親子などのキャラクターのほか、農産物や食品、虹などのイラストが踊る。
ラッピング車両を企画したのは、鎌倉湘南で増えているという空き家を宿泊施設に再生することで観光の活性化を推進する「鎌倉農泊協議会」(鎌倉市材木座)。材木座や腰越、片瀬海岸などに6軒の宿泊施設を構え、農作物の収穫やサーフィン、サップ、料理セミナーなど体験型イベントと組み合わせた宿泊プランを提供している。
鎌倉の海や山など従来からある観光資源に加え、飲食店も公共交通で周遊してもらう動線の確立を狙い、国土交通省・観光庁の事業者連携型の補助金事業を活用。飲食店などのスポットを巡りポイントを貯めた参加者に抽選で鎌倉野菜を使ったヘルシー教室やモデル撮影会、グルメツアーなどとセットの宿泊体験を進呈する「鎌倉ときめきスタンプラリー」と併せ、昨年8月に採択を受けた。ラッピングは、スタンプラリーを含めた体験型宿泊や観光を広く訴求するのが目的という。
「大きな車両に描くのは、活動のイメージが伝わりやすいシンプルなイラストがいいと思っていた」と振り返るのは、同協議会の間宮武美さん。昨年9月、たまたまのぞいたかおかおパンダさんの個展で、「このタッチだとひらめいて、在廊していたかおかおパンダさんに打診した」と話す。
いったんは多忙を理由に断られたものの、間宮さんは「どうしても彼女のイラストで飾りたい」と、締め切り期間や点数の調整などを提案し、3回目の訪問で引き受けてもらった。引き受けた理由をかおかおパンダさんは「協議会が提案するアクティビティーが大好きで、何より鎌倉に関わることができる喜びが大きく、頑張ろうと考えた」と話す。
ラッピング車両は、1編成3両の全体を一枚のキャンバスに見立て、車両をまたぐ大きなイラストも描かれている。かおかおパンダさんは「よりダイナミックに見せようと、ドアや窓、連結部をまたぐ部分で、キャラクターの表情に影響が出ないように全体の比率や角度、バランスを考えるのが大変だった」と振り返る。
昨年12月23日に運行が始まると、「私が広報するよりも先に、友だちやファンの皆さんが写真や動画をSNSに投稿してくれた」とかおかおパンダさん。「空を飛ぶように走る車両を見上げたら、わくわくしてもらえるはず」と喜ぶ。
間宮さんは「景観条例もあり彩度は抑えられてしまったものの、彼女の持ち味を生かしインパクトがあるラッピングになった。コロナ禍で激減した鎌倉の観光に活気を取り戻す一助になれば」と話す。
ラッピング車両の運行は2月23日まで。